力ある人にすり寄ることを意味するコバンザメ、実際のコバンザメはどんな生き物?
「あいつってあの人のコバンザメだよな~」・・・こんな陰口を聞いたことはありませんか?
筆者がそんな風に言われたことがあるわけではないのですが、そもそも「コバンザメ」という言葉はどのような意味なのでしょうか?
今回はいまさら人に聞けない「コバンザメ」の意味についてご紹介します。
コバンザメの意味
コバンザメとは、権力者などにすり寄ることで何かしらの利益を得たりるす人を指す表現です。
ただ、その意味についていまいちわからない人がいるかもしれません。まずは、コバンザメの言葉の意味を解説します。
コバンザメという言葉自体は海で暮らしている生き物のことなのですが、日本ではその特性から比喩表現として使うことも多いです。
その意味は力の強い人の近くにいて、おこぼれにあずかる者のことです。
力のある人と常に一緒にいて離れない人そのものに対して使われる言葉だったりもします。
イメージとしては、時代劇で見かける悪代官にすり寄る商人や小悪党のような者たちです。
つまり、強者に弱者が寄り添ってその恩恵を受けていることをコバンザメと表現するのです。
また、中には「コバンザメ商法」というような言葉もあります。
これは儲かっている店の近くに店を出すことによって、すでに得られている集客効果などを奪うことを意味します。
あまり良い意味では使われないですが、ある意味したたかに生きるているとも言えるかもしれませんね。
コバンザメのような比喩表現は他にもあります。
特定の人、特に権力者などに付いて回り、なかなか離れない様子を表現する言葉です。
これは金魚のフンがなかなか金魚から離れない様子から生まれた言葉です。
腰巾着とは、腰に下げる巾着のことです。
主にぶら下げている人から離れない様子を指し、そこから転じていつも誰かに付き従って離れないことを意味する言葉になりました。
コバンザメという生き物
陰口に使われる「コバンザメ」という言葉を耳にしても、生き物としてのコバンザメについてはあまり知らない人がいるかもしれません。
ここからはそんな生き物のコバンザメについてご紹介します!
コバンザメは分類学上、スズキ目コバンザメ科に分類される生き物で、名前にサメとついているものの、サメではありません。
その姿形がサメに似ているからそう名付けられただけです。近縁種でもなく、完全に無関係な種類の生き物なのです。
主に世界中の熱帯や亜熱帯の地域に分布していて、大型魚類にくっついて生きています。
コバンザメの頭部の背面には小判型の吸盤があります。
この小判型の吸盤と、サメに似た姿形からコバンザメと名付けられました。
ちなみにコバンザメの吸盤には横に18~28枚の隔壁があり、普段は後ろ向きに倒れています。
動いている魚の体にその吸盤が接触することで、隔壁が垂直に立ち上がります。
その際、隔壁と隔壁の間の水圧が周囲の海水の圧力より小さくなり、吸盤が魚の身体に吸着するわけです。
場合によっては生き物だけでなく、船舶にも吸着することもあるそうです。
吸盤で大型のサメ類やカジキ類に吸い付いて生きるコバンザメは、ウミガメやクジラなどにも付着して餌のおこぼれをもらっています。
これらの習性をコバンザメが一方的に得をしていることから、「片利共生(へんりきょうせい)」と呼びます。
常に何か自分より大型のものにくっついて生きていることから、コバンザメを比喩の表現で使われるようになりました。
コバンザメの成魚は大型魚類にくっついて生活していますが、幼魚はサンゴ礁などの掃除魚として生活していることもあるそうです。
とにかく何かにくっついて生きる、それがコバンザメの流儀なのです!(笑)
コバンザメだけじゃない!「片利共生」で得をしている生き物
世界には多くの共生関係を築いている生き物がいます。
中にはコバンザメのように一方的に自分だけ得をしている片利共生の関係になっている生き物もいます。いくつかその代表例ともいえる生き物をご紹介しましょう。
クマノミは、イソギンチャクに隠れながら生活しています。
大型魚類から食べられるのを避けるのはもちろん、イソギンチャクが持つ毒を活用して、外敵から身を守っているのです。
もともとイソギンチャクの毒に対しては免疫もなかったのですが、クマノミは徐々に進化の過程で免疫を持つようになったとされています。
それゆえ、イソギンチャクの近くにいても安全なのです。
中南米に生息する「アリドリ」はグンタイアリの後を追い、アリから逃げる虫などの小動物を捕食する鳥です。
アリを追いかける行動から、「アリドリ」と呼ばれるようになったそうですが、あくまでもグンタイアリから逃げる虫などが目的で、アリを食べるわけではありません。
他にもオニキバシリなどの鳥類も同じような行動が見られるのですが、世界を見てもこれらの行動をする鳥類は限りなく少ないと考えられています。
カクレウオは、他の生き物の体腔内に隠れ住む生き物です。主にナマコなどの海底生物の中で生活している姿が確認されています。
昼間は体腔内に隠れており、夜になると外に出て捕食活動を行うのが特徴です。母体を隠れ家として使っているわけですね。
中には寄生虫のように母体となる生き物を食い荒らすという意見もありますが、その行動が明確となる証拠があるわけではありません。
また、ナマコの他に貝やホヤなども宿主にするなど、カクレウオは常に誰かの体内に隠れて生きています。
過去にはナマコ1匹に対して、カクレウオ15匹が住んでいた例も発見されているのだとか。
まとめ
コバンザメは、強い者からおこぼれをいただこうとする人のたとえです。
その比喩表現にはコバンザメという生き物そのものの特性が由来となっています。くれぐれもみなさんは自分の力で生きていくようにしましょうね!(笑)