次世代ロボット掃除機を宣言したパナソニック「RULO」の”次世代”を紐解く(後編)
2015年に"三角形のロボット掃除機"として初代モデルが発売されて以降、毎年のようにバージョンアップを重ねてきた、パナソニックのロボット掃除機「ルーロ」シリーズ。2020年発売の新モデル「RULO MC-RSF1000」では、"レーザーSLAM"と呼ばれる船舶や潜水艦、航空管制でも導入されているナビゲーション技術を搭載し、2.5センチまでの段差を乗り越えられるリフトアップの機構を採用するなど、これまでとは違う方向で大きく進化を遂げた。
主に機構・設計や技術的な部分を中心にお話を伺った前回に続いて、今回は"プロダクトデザイン"を軸に、外観的なデザインについての話を担当者に語ってもらう。
前回ご紹介したとおり、新ルーロは、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)と共同開発し、2018年に技術発表されたコンセプトモデルが原型となっている。技術や機構・設計面のみならず、外観上のデザインについても、それとは似ているようで異なる要素がある。
fuRoを原型としつつも、デザインや質感などが差別化されているのが一目瞭然だが、大きな変更点として、パナソニック アプライアンス社 ランドリー・クリーナー事業部 クリーナー開発課の古賀理基氏は“本体の大きさ”を挙げる。
「先にも述べましたが、家庭で活躍できるように本体高さを114ミリから99ミリへとコンセプトモデルよりもかなり低く抑えたため、少し平べったくなっていますが、側面の形状や面の角度を調整することで、ロボット掃除機の機動性イメージを損なわないよう工夫しています」
さらに、「"脱家電”や“ロボット感"を醸し出すために意匠を変えた部分もある」とし、「細かいところでは、コンセプトモデルは、状態を示すLED表示や、フタの内側にボタンなどがありましたが、最終商品ではこれらを排除しました。このような表示やボタンがどうしても"家電感"を引き出してしまうというのが理由です。最終商品では、"脱家電・ロボット感"を目指して、状態表示を意思表示に見立ててLEDの色で表現し、ボタン類をなるべく集約して文字による表示もなくしました」と話す。
新ルーロは、全ラインナップの中でもフラッグシップモデルと位置付けられるモデルだ。市場には、レーザーSLAMは非搭載の従来のルーロもスタンダードモデルとして引き続きラインナップするが、"三角形"という形状以外に、ルーロ全体に統一感をもたらすシンボル的なデザイン意匠について、同クリーナー商品企画課の浦川航氏は次のように説明した。
「新しいルーロのデザインには、従来のルーロから変わらない部分と変わった部分があります。ルーロは三角形で隅の掃除も得意なことが重要な特長のため、この機能が変わらないデザインとしています。三角形の形状以外の継承点としては、本体色として白色をベースとしていることです。黒色のロボット掃除機が市場に多い中で、ルーロの白色は清潔感や人との親和を象徴する色としてお客様からも支持されており、コンセプトカラーとして白色を採用しています」
一方で、フラッグシップモデルであることを強調し、スタンダードモデルとは差別化を図ったポイントが"レーザーセンサー"にあるという。「新ルーロで、意匠として従来ルーロと差別化しているのは、レーザーセンサー部分を目立たせることです。従来の幾何学的な三角形から、生命感を感じさせる有機的なフォルムへと変えることで、より知性が進化したことを表現しています。具体的には、トップにあるセンサー部分の円盤をシルバー塗装やエッジのある幾何学形状にすることで、高い質感と業界トップレベルのレーザーセンサーを搭載したテクノロジーの進化を表現し、他商品との違いを示しています」と、古賀氏。
次世代のロボット掃除機として、ハード・ソフトの両面で飛躍的な進化を遂げたルーロ。最後に、今後の進化の方向性について改めて訊ねたところ、浦川氏は次のように話してくれた。
「今後のルーロの進化は、センサーなどのハードウェアをアップグレードするだけでないと考えています。ネットワークにつながり、ソフトウェアをアップデートすることで、ユーザーが購入した後も新しい機能を追加することが可能です。例えば、ルーロの掃除状況をリアルタイムで確認可能なマップへアップデートする予定です。今後もあらゆる家電がつながるスマートホームが実現化していく中で、家の中を動き回れる唯一の家電であるルーロが担う役割は非常に大きく、可能性に溢れていると思います。ルーロの進化はここで止まらず、どんどん進化していきます。世の中の動向やユーザーの意識の変化に合わせて何が提供できるか考えていきたいと思います」
昨今のロボット掃除機市場は、国内外大小多数の企業が参入し、ひと昔前の製品に比べると市場全体で技術的にもある程度成熟し、価格面での競争になりつつある面もある。そうした中、"三角形"という独自の形状を持つ以外にも、日本の大手メーカーとして早期から取り組みを続け、次世代のロボット掃除機への模索を続けるパナソニックの飽くなき挑戦に、今後も注目したい。