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「ルンバ」は、なぜ従来の走行パターンを捨てたのか

1992年にMITの人工知能研究室の学生だった、現CEOコリン・アングルら3人が創業したアイロボット社。ロボティクス一筋で技術開発を進め、2002年に初代ルンバを発売。以来、常に世界のロボット掃除機市場を牽引してきた同社が、ロボット掃除機の本質をさらに追求したトップモデル「ルンバ 980」を発表した。

ロボット掃除機の本質は、人の代わりに、なるべく広範囲をきれいに掃除することだ。アイロボットの「ルンバ」はパフォーマンスや性能、売り上げシェアなど、あらゆる側面で自他ともに認めるロボット掃除機の世界王者である。だが、王者でありながら、その本質をこれまで完璧にはクリアできていなかったのが実情。ルンバはこれまで、同じ場所を平均4~5回通る走行パターンで、1部屋を丁寧に掃除することには長けていたが、実は複数の部屋や80㎡を超えるような広範囲を網羅することは苦手だったのだ。

「ルンバ 980」は、その本質に近づくために、これまでのやり方に、さらにイノヴェイションを起こした。なぜなら、そのままでは、これ以上の高みへと登ることが不可能だと判断したからだ。同時に、視覚的に状況を判断しながら、マッピングしたデータを元に移動する多目的ロボット開発プラットフォーム「AVA」を長年研究しつづけている、ロボットメーカーならではの技術を持っていたからである。「iAdapt 2.0ビジュアルローカリゼーション」という機能を搭載することにより、1回通りすぎるだけで完璧に掃除する新たな走行パターンを身につけた。

「ルンバ」は、なぜ従来の走行パターンを捨てたのか

「ルンバ 980」本体に搭載されたカメラとフロアトラッキングセンサーなどの多彩なセンサーにより、フロア全体をナヴィゲーション。常に自分の居場所を正確に把握すると同時に、部屋の清掃されていないエリアを高精度に判断する。これにより清掃できる面積は、家まるごと112畳(185㎡)に広がり、家の隅々まで清掃できるようになった。

いくつもの部屋があるような広い家でも、効率よく隅々まで掃除できるようになった。

とはいえ、1回通っただけであらゆる床のゴミを取り除くことなど可能なのだろうか? その疑問に答えるべく、これまでのルンバとは比較にならないほど強力な「AeroForce クリーニングシステム」を開発する。従来モデルと比べて最大10倍もの吸引力を実現する「ハイパワーモーターユニットG3」を搭載。特殊素材のローラーでゴミを浮き上がらせ、モーターにより生み出された気流により、ルンバ内部に強力な真空状態をつくり出すことに成功。これによりフローリングはもちろん、カーペットに絡み付いた髪の毛やペットの毛、目に見えないハウスダストなどもすべて吸い込み、一切取り逃さない。

加えて、広範囲を網羅するためには、エネルギー効率を高めることも必須だ。そのため、ゴミの少ない場所はそれなりの吸引力を維持するとともに、ゴミの多い場所を通ると、綺麗になったと判断するまで、前後のブラッシング動作で集中的に清掃。さらに繊維の奥に入り込んだホコリや髪の毛を取り除くときには、吸引力を最大10倍に引き上げる「カーペットブースト」を発動するなど、適材適所で必要なだけの吸引力を発揮することに成功した。

アイロボット社は、新機種を開発するために、これまで成功していたにも関わらず、さらにイノヴェイションを起こした。得意だと思っていたことに溺れることなく、人の代わりに、なるべく広範囲を綺麗に掃除するという本質を鋭く透察することで、また一歩、ロボット掃除機の理想の頂へと近づいた。

[アイロボット]