家電のロボット化の最先端って、今どうなっているの?
古田氏は後に、大学の理工学部で機械工学を学び、1998年には科学技術振興機構の北野共生システムプロジェクトに所属。ヒューマノイドロボット「morph2」を開発して脚光を浴びる。2003年には、千葉工業大学未来ロボット技術研究センターfuRo(Future Robotics Technology Center)の所長となり、様々なロボットを生み出している。
古田氏は、現在の機械の限界と理想のロボット像を次のように語る。
「まだ技術が未熟な“機械”は、色々と不自由なんですよね。例えば、自動車は地面が平らなところしか移動できない。だから車を通すために、山を崩したり、木をバッサバッサと切ったりして道路を舗装していく。でも、技術が高度になって、自動車が野山でも進めるようになれば、こうした環境破壊が必要なくなりますよね」
そう語る古田氏が開発するロボットの特長は、トランスフォームすること。変形することで、環境への順応性を高めることができるからだ。
「バリアフリーという言葉がありますが、逆に車椅子が環境に応じて変形するようになれば、バリアフリー化は必要なくなります。例えば平地では車輪で走行し、凸凹道や階段では足が出てきて歩き出すようになればいいわけです」
fuRoで開発された未来のモビリティ「ILY-A」ユーザーが移動する環境や、望む用途によって形態を変えていく。そんな理想を形にした最新機が、1人乗りの電動小型モビリティ「ILY-A」。
「ILY-A」は、「vehicle mode」「kickboard mode」「cart mode」「carry mode」の4形態に変形。移動したり、スポーティに乗ったり、荷物を運んだりでき、使わない時にはコンパクトに折り畳むこともできる。
「vehicle mode」「kickboard mode」「cart mode」「carry mode」の4形態に変形だが外観からは分からない「ILY-A」の画期的なポイントは、ベビーカーほどの小さな筐体の中に、ロボット技術を応用した「知能化安全技術」を搭載していること。突然飛び出してくる人や障害物などを認識し、自動で車体を減速させる。
これは、刻々と変わっていく周囲の状況を、ハンドル下のレーザーセンサーによるリアルタイムマップ作成技術によって把握するというもの。つまり、ユーザーは、行きたい方向にハンドル上のスライドパッドを向ける。それだけで、安全に目的地に到達できるという、誰もが簡単に操つれるモビリティなのだ。
「技術がどんどん高度になると、人(ユーザー)にやさしくなっていく。ロボット技術って、そういう風に使われるべき。だから僕は、ロボット技術が家電に入っていくとしたら、そっちの方向かなぁと思います」
fuRoの開発室で見たHalluc II(ハルクツー)の初期モデル。8つの脚を持ち、車輪で動くことも、歩くこともできる走行モード時の足先歩行モード時の足先歩いているところ