掃除ロボット「ルンバ s9+」が見通す近未来--円形からD型に変更しただけじゃない
「新製品は一言でいうと、ゴージャスなロボット。最新デバイスを単に組み上げたのではなく、AIとセンサー技術で空間を認識し、クラウドアーキテクチャーで進化を続ける。アイロボットの長期的な目標である、“人のより良い暮らしのお手伝い”に向けた大きな一歩となるモデルだ」──と、アイロボットのコリン・アングルCEOは誇らしげに語った。2月28日に発売したロボット掃除機「ルンバ s9+」の発表会の一幕である。
同モデルは16万9800円(税別、アイロボットストア価格)と価格もゴージャスだが、目に見える変化の裏に、将来への布石ともいうべき進化が隠れている。従来モデルからどこが進化したのか。s9+の開発に携わったアイロボット アソシエイトプロダクトマネージャーのアイリーン・リー氏に聞いた。
アイロボット アソシエイトプロダクトマネージャーのアイリーン・リー氏円型からの変化--賢くなったからD型にできた
s9+の変化はまず、その外見を見れば一目瞭然である。アイロボットはこれまで円型にこだわってきた。テーブルの下を掃除する際に、円型ならば椅子の足に引っかかることなく脱出できるからだ。しかしs9+では初めてD型デザインを採用した。「次世代モデルを開発する上でのコンセプトは、掃除という行為をより上のレベルに上げていきたい、ということだった。
まずは課題であった壁際、コーナーのゴミを徹底的に取るためにはどうしたらいいか。その解がD型だった」とリー氏は説明する。「D型にすることで、クリーニングヘッドを車輪の前に出し、本体幅いっぱいまで広げることができ、掃除のレベルをさらに上げることに成功した」。従来は左右の車輪の間にクリーニングヘッドを配置していたが、前面に移動することで従来よりヘッド幅が30%広がり、一度に掃除できるエリアが拡大している。
左がs9+、右がi7。本体をD型デザインにしたことでヘッドが車輪の前に移動し、ヘッド幅が30%拡大した「大型化した吸込口の能力を活かすためモーターのパワーをアップし、吸引力が600シリーズ(エントリーモデル)に比べて40倍になった」。2019年に発売したルンバ i7シリーズと比べても4倍の吸引力強化だ。「さらにそのモーターを支えるためにバッテリーも見直した。「小型化しながらロングライフとなり、静音クリーンモードならば最大120分の連続稼働ができる」。外見だけでなく、肝心の掃除性能も大きく変わったとする。
静音クリーンはs9+から新たに追加された掃除モードだ。「日本のユーザーは吸引力を重視する一方で、騒音もコントロールしたいというニーズがある。つねに最大の吸引力で掃除したいわけではなく、使い分けたいと考えている」。s9+では、「徹底的に清掃」「静音クリーン」「カスタム」の3つのモードがあり、スマートフォンアプリを使って簡単に切り替えられる。
徹底的に清掃モードはオートモードで、床の材質や汚れを検知して吸引力をコントロールする。カーペットやゴミが多い箇所ではマックスパワー(これが600シリーズ比で40倍)となり、フローリングではパワーダウンする。カスタムは、吸引力を任意のレベルに設定できるほか、部屋を1回で清掃、2回清掃というようにルンバの動き方も設定できる。なお、徹底的に清掃モードでは、おおよそ60分弱でバッテリーが切れる。
s9+から新たに追加された静音クリーンモード。s9+から掃除する時に3つのモードから選べるようになった3Dセンサーもs9+から新たに搭載されたシステムだ。前方2箇所からの赤外線によって部屋の中を立体的に計測するもの。「これにより、わずか1cmの高さ物体を検知できるようになった。家具、障害物、壁、部屋のコーナーを認識し、近づいたらスピードを落として優しく接触する」。
この3Dセンサーの搭載が実はD型デザインへの変更の鍵となり、将来の可能性を広げる鍵となるという。これまで円型にこだわってきたのは、家具の間に入った時に脚などに引っかかって脱出できないことを防ぐためだったが、3Dセンサーにより障害物の位置、大きさを検知できるようになったことで、D型でも脚に引っかかることなく難なく脱出できるようになったという。
3Dセンサーは本体の正面に搭載ちなみに、家具にぶつからないことを特徴としている他社モデルもあるが、ルンバはあえてぶつかるように設計しているとのこと。「ぶつからない仕様だと、カーテンを障害物として認知して手前で停まってしまい、カーテンの下や掃き出し窓のサッシの際まで掃除しない。また、米国ではベッドには床近くまで垂れる大きなカバーを掛けていることが多いため、ぶつかる仕様にしないとベッドの下に潜り込まない」。