我が家の老犬の進化が止まらない
3月21日に東京の緊急事態宣言が解除されてから、少しだけ出社することが増えた我々夫婦。ほぼ在宅でいいのだけれど、時々出社することは、鈍った体にも気持ち的にも、そして仕事の進捗的にもいいなぁと思っている。私の中では週1出社がベストだ。
夫も春から出社する日が結構多くなってきて、この1年ほぼ毎日ランチも2人で食べていたけど、最近はひとりご飯が増えてきた。1人で食べるランチは何となく味気なくて、さらに自分のためだけに何か作る気も起きず、1人の時は卵かけご飯とか納豆ご飯とかだけで十分な私。さらには食べるよりも昼寝しよう。などという時も。夫がいるおかげで、私自身が健康的で美味しいものを食べていけるという、完全セルフネグレクト系の私である(笑)。
ひとりランチの日が増えたのは寂しいけれど、どちらかが家にいると宅急便の受け取り漏れもないし、老犬に目が届くので安心で嬉しい。そもそも去年春の緊急事態宣言を機に、家にずっといることになったからと、当初一時預かり予定で保健所からやって来たお爺わんこ。緊急事態宣言が明けても在宅が続いたので、そのまま我が家に居座り、そしてとうとう「飼い犬」の称号を手に入れたわけだ。我が家にも慣れてお留守番できるようにはなったけれど、それでもやっぱり心配になっちゃうので、どちらかが家にいられるのは嬉しい。
目が見えないお爺わんこは、最初はルンバのようにあちこちぶつかりながら家の中を彷徨っていた。1カ月もせず部屋のマッピングを完了して自由に動けるようになった。そしてソファを自分のホームにして登りたい降りたいの主張をイッチョマエに始めた。最初はペット用ベッドで幸せそうにしていたのに、すぐに床に置いてあるベッドでは嫌だ! ソファの上がいい! と言い出して、さらには私に腕枕と添い寝を強要しはじめた(笑)。
腕枕ブームは半年ほどで去ったらしくて、今は私の枕元でひとりで寝るのがお気に入りだ。枕は低い派なのかも。お部屋の中をテクテクと散歩して、ご飯食べて水飲んでトイレして、一通り終わると自分のホームソファに戻って、1番可愛く1番切ない声で「キューン(意訳:乗せてー!)」と鳴くのだ。
かなりヨボヨボになってから我が家に来たので、今更きちんと躾をするつもりもなく、これまでできなかった10数年分のわがままと贅沢を爆発させて楽しめー! と思っていたので、当たり前だけれどちっとも言うことを聞かない(笑)。
目も見えず耳も聞こえないけれど、鼻だけはものっすごくいいので、私たちがご飯を食べている時は大興奮で欲しがる。もちろん塩分だとか玉ねぎだとか、体に悪いものは食べさせないけれど、「生い先短い犬生、存分に満喫しなはれ」と、食べられるものは結構お裾分け。天国に見送った愛犬からすると、「えー!? そんなわがまま許されなかったですけどぉ?」とビックリされそう(笑)。
我が家に来てから初めて食べるものばかりで、毎日が新鮮でとっても楽しそうだ。初めてもぎたてのリンゴを食べて感動し夢中で食べたり、初めてお刺身食べた時はお替わりコールがすごくて、「もうあなたのはおしまい!」と自分たちが食べるのも大変だった(笑)。焼き芋が大好きすぎて、芋が焼けてくると寝ていても鼻がヒクヒク動き出して、焼き上がると目が覚める。本当に食欲の権化のようなお爺さまである。昔から「初物を食べると寿命が75日伸びる」と言われるけれど、初物づくしと食欲のおかげで寿命がグングン伸びているのかもしれない(笑)。
進化はそれだけではない。私が出社していたある日、夫から「今日、打ち合わせ前に『ご飯食べてね』とソファから降ろしたら自分でソファに登っていた」とLINEが来た。ソファに自力で登ることができないので、いつも抱っこで登り降りをしているお爺わんこ。お友達から譲り受けたペット用の階段を設置して、使ってくれることを期待していた。自由に階段で上り降りできたら、お互いに楽になるからだ。
何度も「いっち、にっ」と、一歩ずつ足を取って練習みたいなことをしたけれど、全く使ってくれる気配すらなかったし、使うことはないであろうと完全に諦めていた。それが急にしれっと階段を上ってソファの上で寛いで寝ていたというではないですか。「クララが立ったわ!」並に衝撃で、その初めてに立ち会えなかったことがすごく悔しかった。いや、夫も見れていないのだけど(笑)。
翌日以降その現場を押さえたくてずっと見ていたら、私がいると階段を使うよりも抱っこしてもらった方が早いので、わがままを言う。いくらねだられても、そっと息を潜め待っていると、諦めたように階段に向かい、えっちらおっちらと上った! 目が見えないもんだから途中で足を踏み外してやり直しになったりしつつも、最後まで自分で階段を上ったのを見て、もう目頭がジーンと熱くなって本当に感動!
いくつになっても新しい発見をし、学びと成長を続けているのだ! 本当に尊敬できる爺さまである。最期くらいは温かい寝床とご飯を提供するつもりだったので、1年経った今も元気に進化を続ける姿に、むしろ私が励まされ助けられているような気がしている今日この頃。我が家に来るべくして来たんだなぁと、大声で自慢したいのでした。