スバル「XV(2014年モデル)」
では走り出してみよう。今回のXVの改良は、乗り心地と静粛性アップだ。まず、乗り心地についてはダンパーに変更が加えられた。フロント、リアともにダンパーのバンプ側(縮み側)の減衰を落としている。それと同時にダンパーそのもののフリクションを低減し、よりスムーズに動くようにしているのだ。スプリングやスタビライザーなどのレートは変更されておらず、ダンパーのみによって乗り心地と走行安定性の向上を図っている。実際に走らせてみると、サスペンションの締まり感はこれまでとそれほど違いは感じられないが、路面の凸凹やギャップに対する突き上げ感などは明らかに減少している。特にこれまでは、リアサスペンションが跳ねてしまう現象が感じられたけれども、今回の改良でそれらはほとんど感じなくなった。
同時に、静粛性もかなり改良されている。これは防音材や制振材などの追加によって静粛性が高まったとのことだ。サスペンションの突き上げと静粛性に関しては、私がいつもテストコースの1つとして選んでいる西湘バイパスで確認したのだが、不快と感じないレベルにまで進化していて驚いた。
つまり、今回の改良ではコンフォート性に重点が置かれたわけだが、実はハンドリング面でも改良が加えられている。それはステアリングギヤ比がクイック化されたことだ。これによって、コンフォート性の追究で若干スポイルされるかもしれないスポーティな挙動を補う目的があったのだろう。それに伴い、リアサスペンションのブッシュ類が強化されている。こちらは、乗り心地の改良とは相反する仕様変更と見られるかもしれないが、ステアリングスピードが速くなったことに対してリアの追従性をしっかりさせる目的から行われた改良だ。つまり、サスペンション系はソフトになったけれども、ステアリングとリアサスペンションブッシュの改良によって、スポーティなハンドリングはそのまま維持されているといえるわけだ。
では、注目のアイサイトだ。今回のXVの進化の目玉は、このアイサイトがver.3(バージョン3)に進化したことだろう。アイサイトver.3は「レヴォーグ」で初めて採用された最新のもの。ver.2と比べてver.3でなにが変わったかというと、衝突回避をする速度が約30km/h以下から約50km/h以下に引き上げられたことだ。そして、カラー認識となったことによって前方車両のブレーキランプを認識できるようになっている。進化したステレオカメラによるこれらの安全性向上は著しいものがある。
そしてさらにもう1つ、車線からのはみ出しを予防する操舵支援機構「アクティブレーンキープ」が装備された。これによって前方車両に追従しながらも、車線から自車がはみ出さないように走れるようになったのだ。こちらも西湘バイパスを使って実際に試乗しながら、バージョンアップされたアイサイトを試してみた。アクティブクルーズコントロールをONにして、さらにアクティブレーンキープもONにする。
特別仕様車の「XV POP STAR」。ボディーカラーは「サンライズイエロー」アクティブクルーズコントロールは、前方車両の速度の増減に対する反応が以前よりも早くなったように感じる。このあたりはレヴォーグなどと同じようなレスポンスだ。そしてアクティブレーンキープ。こちらは、車線からはみ出しそうになったところで車線中央に戻すようステアリングにトルクが加えられ、明らかに安全になっているといえる。ただし、はみ出しそうになったときに制御して、車線からの逸脱を防止するというだけで、車線の中央を維持するものではなかった。XVはもともと直進安定性が高いので、普通に走っている限りこのアクティブレーンキープのお世話になることはないと思われるけれども、このあたりの制御がレヴォーグとは少し違う。
XVは今回の改良によって、アクティブレーンキープの追加をはじめ、プリクラッシュブレーキや全車速追従機能付クルーズコントロールの性能向上でクラストップの安全性を実現し、乗り心地も含めた質感の向上によってひとクラス上級なモデルへと進化している。