汚部屋からのエクソダス:四十男 築50年の家を買う(1)
引っ越す先の物件については、人生も後半戦に入ったということもあり、分譲マンションを中古で探した。一人暮らしかつ自動車を持っておらず、今後も所有しそうにないことから、駅から歩ける距離が条件だ。結果的に、前の物件から直線距離で4km弱しか離れていない物件に決まった。価格は、決して高くはないが格安でもないといった塩梅で、地域の相場の範囲内だ。
新居は、鉄筋コンクリート造とはいえ築50年以上の古いマンション。間取りは、2DK(寝室4.7畳、仕事部屋5.2畳、ダイニング8.2畳)で、専有面積は38m2強。加えてバルコニーもある。
良い点は、駅にかなり近く電車の移動が楽なことや、駅前のコンビニやスーパー、飲食店、銀行などがそのまま徒歩圏内の施設として利用できる点。警察署、消防署、郵便局などもあり、およそほとんどが揃っている。また10分程度歩けば、別の大型の駅にもアクセスでき、その周辺の店舗や施設も生活圏内ということになる。
不動産屋いわく、物件の価値は、建物の築年数など以前に、不動産という字のようにまずは“立地”であるという。その意味で、最寄り駅の出入口から歩いて10秒ぐらい(!)という、駅前そのもののこの物件は、小規模なオフィスや高齢者向けとしても需要が高いとのことだった。実際、同じ階のいくつかの部屋は、事務所やスタジオとして利用されているようだ。
悪い点は、駅に近いというより駅前そのものであり、街の騒音や、20mぐらいしか離れていない大型幹線道路の騒音がかなり大きいことだ。
物件の向かいにはパチンコ屋があり、その隣から飲み屋が軒を連ねるなど、ぶっちゃけ近隣でも最も騒がしいエリアだ。幹線道路を爆音で走る車やバイクをはじめ、緊急車両が昼夜を問わず頻繁に通る。パチンコ屋の出入り口のドアが開くと盛大に漏れ出てくる店内アナウンス、深夜の飲み屋の客の大声・奇声もすべて、何を言っているのか分かるレベルで聞こえる。
駅の入口の前に立ち、通勤客に向け朝の7時半から政治家が街頭演説を始めたときも、ベッドの中で内容がすべて聞き取れてしまった。
なんというか、メリットとデメリットがものすごくハッキリした物件といえる。
入居直後のダイニングと洗面室の様子。エアコンだけ取り付けが終わっているもっとも、環境として騒音が大きく、それが盛大に部屋の中にも入ってくることは、物件の内見の時点で把握していた事だ。周囲の環境もそうなのだが、突き詰めると、問題は物件のサッシが古くガタガタのすき間だらけで、遮音性がかなり低いことに起因している。
住み始めてからもこの印象は変わらず、窓を閉め切っていても「あれ? 窓開けたっけ?」と錯覚するほど外の音が入ってくるのだ。サッシのすき間が大きいため、ちょっと強めの風が吹いただけでカーテンがフワっと揺れる始末だった。
仕事部屋になる予定の部屋の、掃き出し窓。年代物のアルミサッシですき間だらけのため、外の音がかなり入ってくるしかし、この問題を解消してまともな環境にできれば、駅に近いというメリットだけが残ると考えた。そのため、この物件に決めた時点で、窓の防音対策もセットで考えた。
また、物件はどこであれ、音楽をスピーカーで楽しむ際の防音対策は気になっていたところ。一軒家の“オーディオルーム”とまではいかないが、物件は鉄筋コンクリート造で最上階の角部屋なので、窓の防音対策をしっかりすれば、まとなレベルで音楽・オーディオが楽しめ、嬉しいメリットになるのではないかと思った。