19

Apr

日本市場攻略に本気のXiaomi 「Redmi Note 11」は5G非対応版も納得の理由

3月5日(土)6時5分 ITmedia Mobile

日本市場攻略に本気のXiaomi 「Redmi Note 11」は5G非対応版も納得の理由

3月10日に日本で発売されるXiaomiのRedmi Note 11。写真はMWC Barcelona 2022で撮影した欧州版

写真を拡大

 ミドルレンジモデルのコストパフォーマンスが評価され、徐々に日本での存在感を高めているXiaomi。同社は、2021年初のモデルとして、1月26日にグローバルで発表した「Redmi Note 11」を3月10日に発売する。5000万画素のメインカメラを含む4眼カメラを搭載しながら、価格は2万4800円(税込み)。Xiaomiが得意とするコストパフォーマンスの高さを発揮した格好だ。 Xiaomiは、2021年に“再定義”をテーマに掲げ、2万円台前半の5Gスマートフォン「Redmi Note 9T」をいち早く投入したり、KDDIとタッグを組んで日本専用モデルの「Redmi Note 10 JE」を発売したりと、ラインアップを拡充してきた。フラグシップモデルとしては割安な「Xiaomi 11T/11T Pro」もラインアップに加えている。 そんなXiaomiが2022年に進めていくのが、さらなるローカライズだという。ここには、端末だけでなく、会社としての体制やマーケティング活動、さらには販路なども含まれる。ここでは、Redmi Note 11の特徴を紹介するとともに、同社の日本市場における戦略を解説していく。●ミドルレンジ並みのスペックをエントリレベルの価格で実現したRedmi Note 11 Redmi Note 11は、Xiaomiがボリュームゾーンの市場に向けて投入したスマートフォンだ。4Gモデルながら、プロセッサにはQualcommの「Snapdragon 680」を採用。5000万画素のメインカメラに加え、800万画素の超広角カメラや200万画素のマクロカメラ、200万画素の深度カメラも備える。深度カメラだけでは写真を撮ることができないため、実質的には3眼カメラだが、この価格帯の端末としては高いスペックといえる。 ディスプレイも“お値段以上”だ。2万円台の端末の場合、コストの関係で液晶になることも多いが、Redmi Note 11は6.43型の有機ELディスプレイを採用。しかも、リフレッシュレートは最大90Hzで、60Hzが標準のエントリーモデルよりスクロールや動画などの動きが滑らかになる。ボディーは樹脂製だが、塗装で硬質感をうまく再現しており、安っぽさは感じさせない作りだ。 OSはAndroid 12で、Xiaomiが独自に手を加えた最新の「MIUI 13」を採用する。MIUI 13はユーザーインタフェースなどの目立った変化は少ないが、端末の基本性能を向上させる深いカスタマイズが施されているという。「Liquid Storage(リキッドストレージ)」はその1つ。これはデフラグの効率を60%向上させる機能で、36カ月間使用したあとの読み込み、書き込み速度を95%に保つことができるという。一般的なAndroidは50%まで低下するというため、その効果のほどがよく分かる。 メモリ(RAM)の最適化を行っているのも、MIUI 13の特徴だ。一般的なAndroidの場合、アプリごとにメモリを管理しているが、MIUI 12では、アプリの中の細かな機能まで見て、必要なものだけを残すようにしているという。結果として、バックグラウンドの処理効率が40%向上。CPUの処理速度向上や、バッテリー寿命の向上といった機能もMIUI 12の特徴だ。 MIUI 13は、中国市場で発表した「Xiaomi 12」や「Xiaomi 12 Po」といったフラグシップモデルに採用されたAndroidのカスタマイズOSだが、ソフトウェアなだけに、他のモデルにも広げやすい。性能向上に関しては、もともとプロセッサの処理能力が高いフラグシップモデル以上に、エントリーモデルやミドルレンジモデルの方が恩恵は大きくなりそうだ。●Redmi Note 11だけなのはなぜ? 日本市場に合わせた端末展開 Redmiは、Xiaomiのミドルレンジの中核を担うシリーズ。グローバルでの累計販売台数は2.4億台を超えており、コストパフォーマンスの高さが評価されている。スペイン・バルセロナで2月28日から3月3日かけて開催されたMWC Barcelona 2022でも、同社はRedmi 11シリーズを出展。ブースの入り口付近にコーナーを設けて、大々的に展示していた。 一方で、Redmi Note 11シリーズには、それぞれ微妙にスペックが異なる4つの端末が取りそろえられている。日本に投入するのは、その中心的なモデルとなるRedmi Note 11のみ。メインカメラを1億800万画素に強化した「Redmi Note 11S」や、1億800万画素のメインカメラと120Hz駆動のディスプレイを備える「Redmi Note 11 Pro」の発売はアナウンスされていない。 5G対応の最上位モデル「Redmi Note 11 Pro 5G」も、販売の計画は明かされなかった。Redmi Note 11は、これら4機種の中では最も価格が安く、スペックも低い。日本市場では、なぜRedmi Note 11だけを投入したのか。Xiaomi Japanでプロダクトプランニング部 本部長の安達晃彦氏は、「全てを持ってくるには、まだ(日本の)市場規模が十分ではない」と語る。 SIMロックフリーモデルと同時にキャリアモデルを展開しつつ、21年は前年対比の出荷台数が500%と急成長を遂げたXiaomiではあるが、実数での規模感はまだまだ小さい。調査会社MM総研が2月9日に発表した2021年のメーカー別スマートフォン出荷台数シェアでは、Apple、シャープ、サムスン電子、ソニー、FCNTが5位までを占めており、OPPOやXiaomiといった参入から日が浅いメーカーは、「その他」にまとめられている。 ラインアップが先か、市場規模が先かは鶏と卵のような関係だが、この規模感でスペックの差が小さな4モデルを展開するのは現実的ではない。Redmi Note 11は冒頭で挙げたように、価格が2万4800円とお手頃で、契約にひも付く割引を提供するMVNOなどの「パートナーを通じて、非常にリーズナブルに提供できる可能性がある」(同)。2万円台前半のスマートフォン市場が急拡大する中、最も手ごろな価格の端末を投入するのは合理的だ。 メーカーモデルとして販売し、MVNOも扱うとなれば、5Gに対応している必要性も薄くなる。日本では、ドコモの5G契約者がまだ全体の10%程度と少なく、4Gモデルの方が市場規模が大きい上に、MVNOの回線ではその特徴である高速・大容量を生かしづらいからだ。MVNOのスループットは、大手キャリアから借りる回線の総容量やそこに流れるトラフィックに左右されるため、端末も、5G対応よりコストパフォーマンスが重視される傾向が強い。こうした市場にフィットしたのが、Redmi Note 11だったというわけだ。●2022年にローカライズを深化させるXiaomi、日本法人の役割も拡大 2021年はFeliCaや防水・防塵(じん)などに対応した日本市場専用モデルを投入し、ローカライズを進めたXiaomiだが、Redmi Note 11はグローバル版ほぼそのままだ。対応周波数は日本に合わせ、メニューの日本語化も行っているが、それ以外は海外で販売されているRedmi Note 11と同じ。パフォーマンスやカメラなどの基本性能の高い端末を、よりリーズナブルに手に入れたい人に向けた端末だ。 グローバルメーカーの強みを生かしたRedmi Note 11のようなモデルを投入する一方で、Xiaomiは2022年に、ローカライズをより深めようとしているという。Xiaomiの東アジア担当ゼネラルマネージャー、スティーブン・ワン氏は、「100%グローバル、100%ローカライズ」が2022年の戦略だと語る。 そのローカリゼーションは、多岐にわたる。1つ目はXiaomi Japanそのものの強化だ。ワン氏は「日本におけるオペレーションはローカルであるべきで、人材に追加投資したい」と語る。先に登場した安達氏を採用したのも、その一環だ。同氏は、ソニー(当時はソニーモバイル、ソニー・エリクソン)でXperiaなどの商品企画を担当してきた人物。端末の「フィードバックを商品作りや日本市場での展開に反映させていく」(安達氏)役割を担う。 ワン氏が「今年はさらに深く日本にローカライズした製品を出そうと思っている」と語るように、2022年内には、Redmi Note 10 JEを進化させたような、日本特化型の端末が登場するという。さらに、安達氏は「日本市場のお役に立てる形で、1年後ぐらいに何らかの爪あとを残せる商品をお届けできればと考えている」と述べ、2023年以降にXiaomi Japan発の日本専用モデルを投入する可能性も示唆した。 また、販路を4000以上に拡大しつつ、「製品開発から物流、財務、会計まで、全てをローカライズするために進めてきた」(ワン氏)。その先にあるのが「リアル店舗」だ。同社は海外で、スマートフォンに限らず、IoT家電などを幅広く販売するXiaomiのショップを広げている。これは、「店舗は全ての製品を体験でき、(消費者が)ビジネスモデル全体を目にできるため、ブランディングに寄与する」(同)からだ。 このストアを「日本に持ってこようと考えている」(同)という。一方で独自の店舗運営には、場所の選定からビジネスモデルの構築、スタッフの雇用など、かなりの準備が必要になる。そのため、まずは「ショップインショップやポップアップストアで(可能性を)試してみたい」(同)というのがXiaomiの考えだ。電撃的な日本市場への参入から3年目を迎えたXiaomiだが、拡大期に向け、本腰を入れ始めようとしていることがうかがえる。

関連記事(外部サイト)