25

Mar

【光Ethernetの歴史と発展】到達距離10kmの「800G-LR」に向け、Coherent-Lite方式の検討を求めるGoogle【ネット新技術】 - INTERNET Watch

800Gで到達距離10kmの標準規格をどう実現するのか?

 前回に引き続き、2021年7月のミーティングの話。そろそろ自由に提案できる期間も終わりに近づいてきたこともあり、あわててというわけでもないにせよ、いろいろと細かな提案が目立つようになってきた。

 まずはGoogleのCedric F. Lam、Xiang Zhou、Hong Liuの3氏による"Coherent-Lite for beyond 400GbE"。800Gで到達距離10km、という仕様そのものは受け入れられているものの、その10kmをどう実現するか、がまだ検討されていないと指摘。

10kmは仕様としてあるべきだ、という話は4月ミーティングのMotion #6で可決している

【光Ethernetの歴史と発展】到達距離10kmの「800G-LR」に向け、Coherent-Lite方式の検討を求めるGoogle【ネット新技術】 - INTERNET Watch

 そしてGoogleは、自社のキャンパス内ネットワークのトラフィックがここ4年で10倍に膨れ上がり、オマケにキャンパス内のネットワークの距離が10kmに広がった、という指摘をしている。要するに、自社で使うために800Gで10km到達可能な標準規格をきちんと定めたい、というわけだ。

これが「Inter-Campus」なら分かるが、「Intra-Campus」というのだから恐れ入るところでCOVID-19の影響でCampusを減らすとか縮小するという動きは、そもそもないのだろうか?(密にならないために、拠点間距離を広げているというのは筋が通らないか)

 さて、10kmになると、CWDM4では難しいということは既に分かっている。Chromatic Dispersion Limit、あえて日本語に訳せば色分散限界となるが、要するにCWDMの場合、利用する4つの光の波長がかなり広がる。800G Pluggable MSAではCWDM4で500mのFR4を実現する予定、というのは『PSM4とCWDM4で1.6Tb/secを実現しつつ到達距離を延長する「800G Pluggable MSA」』で紹介している。

 だが、『25Gbps×4をSMF1本に集約し100Gbpsを実現、到達距離2kmの「CWDM4 MSA」と、10/20/40kmの「4WDM MSA」』で紹介した「CWDM4 MSA」はもう少し速度が遅く、1271/1291/1311/1331nmと20nm刻みの4波長でCWDM4を構成している。

 このCWDM4 MSAだと、波長あたり25Gbpsで、それでも到達距離は2kmと堅いところを狙っている。10/20/40kmの長距離に関しては「4WDM MSA」が担うのだが、こちらは10kmのみCWDM4をそのまま流用したものの、20/40kmはDWDMを採用している。

 『100Gbpsで10/20/40kmの到達距離を狙った「100G 4WDM-10/20/40」』で説明したように、波長は1295.56~1309.14nmと、4.5nm前後へと刻み幅を減らしていて、これで波長の差による特性のばらつきを抑え込んだ格好だ。

 同様の話は当然ここでも発生するわけで、100Gのままであれば5km近くまで行けるかもしれないが、200Gになれば1kmあたりが限界で、10kmなど夢のまた夢という話になる。

 チャープ制御を適切に行えば到達距離は増えるが、今度は信号損失が大きくなり過ぎるため受信側が難しくなる。要するにCWDM4はあきらめよう、という話だ。ではDWDMか?というとそうではなく、Googleは「Coherent-Lite」を提案してきた。

黒線はEML発信機を空冷のまま利用した方式、赤と青は、時間とともに周波数が変化する現象であるチャープ効果を抑えるような仕組みを組み込んだシリコンMZM発信機を使った場合。赤線は理論限界で実際は青線になるが、200Gだと3kmに届くかどうかというあたりになるちなみに、今回の発表者の2人にRyohei Urata氏を加えた3人で、1.6Tb/secをIM-DD PAMとCoherent PM-QAMの2方式で実現した場合の性能と問題を考察した"Beyond 1 Tb/s Intra-Data Center Interconnect Technology: IM-DD OR Coherent?"が参考文献として挙がっている