世界的な半導体不足、なぜ今起きているのか---その原因と解決への道筋は?
最近、ニュースでよく耳にする「半導体の不足」。多くの産業に影響を及ぼし、自動車業界も生産が抑制される要因となっている。そこで、そもそも半導体とは何なのか、なぜ、今、不足しているのか、改めて確認しよう。
半導体は、条件によって、電気を流れやすくしたり流れにくくしたりすることができる。この特徴を活かし、電流を一方向だけに流したり、電気信号を増幅したり、電流を高速でオン・オフ調節したりできる。その機能を持つものを、半導体素子という。半導体素子は、コンピュータ制御などに欠かせない部品で、現代の自動車づくりにも必須のものだ。
たとえば電気自動車(EV)などモーターで走行できる機能を持つクルマは、モーターに電流を高速でオン・オフさせることにより、運転者のアクセル操作に遅れない加減速を実現する。したがって、クルマの電動化に半導体素子は重要な部品だ。
クルマに限らず、日常的な家電製品や電子端末など、そしてスマートフォンのような情報通信機能、写真や映像の録画および視聴など、電気を加減して用いる機器にも半導体素子は不可欠だ。
パソコンが普及し、インターネットの活用が日常化した現在、そもそも半導体素子の需要は世界的に増えており、加えて、EVの普及へ向けたクルマの急速な電動化が進むことにより、供給体制が次第に間に合わなくなった。結果、自動車生産工場の操業停止など世界的な影響が出ている。
そもそも部品の生産工場というのは、半導体素子に限らず、常に100%の操業で儲けが出る仕組みになっている。数百万円する新車と違い、部品一つの単価は安く、それを大量に製造することで事業が成り立っているからだ。したがって工場の稼働率が100%を割り込むと赤字の恐れが出る。
そこで、新車製造のための部品供給も、生産の計画台数が重要で、それに合わせて部品工場の規模が決められる。そのなかでの増産減産の調整は、工場での生産工程や、分散した工場同士でのやりくりでも行えるが、今回はコロナ禍の影響もあり、従業員が出社できなかったり、人数に制約があったりしたため、本来の生産計画通りに製造作業が進まなくなったことも品不足に拍車をかけた。
EV化へ向けた動きでは、リチウムイオンバッテリーの生産も同様で、EVの普及拡大に自動車メーカー自らバッテリー工場建設へ投資を行うようになっている。
半導体の材料は、シリコン(ケイ素)などで、ケイ素は地球上で酸素に次いで多い元素と言われている。したがって、現在の半導体素子の不足は、資源問題というより社会的な構造や環境の変化による影響が大きいといえる。
解決策は、パンデミックの解消と、需要に応じた供給体制の強化になるだろう。どちらも、ある程度の時間を要する課題だ。パンデミックはウイルス感染で、その終息を予測しがたく、工場建設など生産施設の増強も、敷地の確保や施設の増築などには時間を要するからだ。
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