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すでに5兆円超え「中国ペット市場」、 アリババらテック大手もこぞって参入のワケ
中国のペット市場が熱い。世界的には後発だが、過去20年で爆発的成長を遂げ、いまだ関連消費の勢いは衰えない。最近ではアリババなどの有力EC企業が相次いでペットビジネスを強化し、家電の美的、スマホのシャオミといった有力メーカーも、ペット用スマートグッズの開発に参入。スマートカー分野に匹敵する、テック企業の新たな主戦場となり始めた。ペット文化に対してかなり冷淡だった政府のスタンスも、ペットブームを後追いしつつ、変わり始めたように見える。中国経済の命運を握る「個人消費の牽引役」として無視できない存在となりつつあるペット経済の最新動向と、今後の見通しを紹介したい。
執筆:奥瀬なおみ、編集:岡徳之
執筆:奥瀬なおみ、編集:岡徳之
奥瀬なおみ中国語・英語翻訳者兼フリーライターアジアの経済ビジネス情報を配信するNNAの中国本土・香港版編集長を経て、DZHフィナンシャルリサーチ中国株部門の前身、トランスリンクの創業時メンバー。現在は中国のマクロ経済や各業界に関するレポートの作成を手掛けるほか、中国株関連書籍の製作にも携わる。
<目次>- テック大手の主戦場、自動運転と「ペットビジネス」
- ハイテク化加速、ペット家電のIoT化鮮明
- 「鼻紋」ソリューション商用化、個体認識システムの新時代到来か?
- 犬猫食文化に逆風、まずはハイテク都市の深センが「禁止」
- 犬猫「ブラインドボックス」事件も批判一色、ペット文化成熟へ
テック大手の主戦場、自動運転と「ペットビジネス」
中国でペット市場の誕生時期が遅れたのは、毛沢東の文化大革命(1966~76年)時代に、ペット飼育がブルジョアの証として糾弾されたことが一因だ。その後の狂犬病の流行もあり、多くの都市が1990年代前半まで犬の飼育を禁止。その後も高額な登録料の支払いを条件に、限定的に認めるという時期が数年続いた。 ただ、世界的に見て後発でも、解禁以降の市場の拡大ペースはすさまじい。犬猫を筆頭とする都市部のペット飼育頭数は20年時点で1億匹を突破。わずか20年そこそこで約5兆円規模ともいわれる巨大市場が誕生した。 最近のニュースを見ても、ペット消費の勢いは鮮明だ。ネット通販大手のJD.com(京東商城)が主催した今年6月のネットセールイベント「618」では、1~18日のセール期間中に、ペット用スマート製品の売り上げが前年同期の6倍、免疫強化サプリが5倍、輸入キャットフードが29倍、フレッシュミート類が30倍を記録したという。 iResearchは「過去10年の急成長期を経て、ペット市場は向こう10年間、安定成長期に入る」と見て、まずは2020~23年に年率平均14%の拡大を見込むが(2023年に7兆6000億円規模)、上記JD.comのように、個別に伝わる情報はいまだ急成長中といった勢い。ペットは依然、ホットなビジネス分野だ。 新たなチャンスを掴むことに長けた巨大ネット企業や有力メーカーはこの機を逃さず、攻勢をかけている。 前出のJD.comは今年5月、向こう1年で全方位型かつオフライン・オンライン一体型のペット向けサービスネットワークを構築するとの戦略を発表。アリババ・グループの天猫(Tmall)も、ペット専門プラットフォームを向こう3年で “第2の「天猫コスメ」”に育てる計画を明らかにした。わずか2年でGMV(流通取引総額)を倍増させた有力コスメ・プラットフォームに続く存在と位置づける。 このほか、家電の美的(ミデア)、スマホの小米(シャオミ)などの有力メーカーも参入し、ペット市場はすでに、業種を跨いだ大手企業の新たな主戦場といった様相。中国の有力テック企業が大挙して押し寄せている分野といえば、もっぱら自動運転技術などのスマートカー開発ビジネスだが、ペットビジネスも決して負けてはいないのだ。 既存企業の参入だけでなく、起業も相次いでいる模様。中国のペット用品関連会社の数は2019年に、実に15万社増加。2020年にはさらに12万社増えたという(企業データバンクの天眼査アプリ調べ)。 スマート家電の漏電事故といったトラブルも決して少なくないが、これは中国のお約束。大手の参入もあり、段階的に粗悪品の淘汰と全体的な技術アップグレードが進む可能性が高い。ハイテク化加速、ペット家電のIoT化鮮明
最近のペット家電といえば、電動のウォーターサーバーやマッサージ機から、犬や猫を入れる箱型のドライヤー、ハイテクトイレまで多種多様だが、遠隔操作可能なIoT化がトレンドだ。 サービス分野に目を向けると、トリミングやホテル、旅行、医療、葬儀はもちろん、ペット用のフードデリバリーといった日本ではあまり見かけないサービスもある。出前の客単価が、人間用よりはるかに高額ということで話題だ。 中国では既婚、未婚を問わず、ペットの飼い主の多くがZ世代、ミレニアル世代であるためか、スマートデバイスやサービスを通じたペットとのコミュニケーションに対して関心が深い。 日本でも、留守番中のペットの姿を確認し、話しかけ、おやつをあげることができる見守りカメラ「FURBO」(ファーボ)などが人気だが、中国でもそれは同じだ。 ペットに自分の姿を見せることができるうえに、車輪つきの機械を遠隔操作し、ペットと一緒に遊ばせることができる製品もある。猫用には遠隔操作の猫じゃらしも登場した。 トイレも進化中だ。自動お掃除機能はもちろん、飼い主のスマホアプリ上で排便データをグラフ化し、健康管理する製品も登場している。多頭飼育の猫たちも体重で識別し、個別にデータを記録することができる。 ウェアラブルデバイスでは、呼吸数や心拍数を通じた健康管理が可能。散歩中に犬が突然歩かなくなった場合には、体調不良か、単に歩きたくなくなっただけなのか、判定できる製品もあるという。迷子を防ぐためのトラッカー機能やGPS測位機能などは必須だ。【次ページ】「鼻紋」ソリューション商用化、個体認識システムの新時代到来か?グローバル化 ジャンルのトピックス
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