ロボット掃除機やレトルトおせちが人気に、データで読み解く中国の旧正月消費トレンド
解説:大みそかは、大家族が集まってテレビを見ながら団らんする。中国伝統の旧正月の姿だが、経済社会の発展、新たな文化と消費習慣を持つ若者たちの登場、新型コロナウイルスの流行などの要因で大きく変わりつつある。中国のEC(電子商取引)企業であるアリババグループは1月上旬に旧正月向けのキャンペーンセールを行ったが、その販売データから変化する中国社会の実情がはっきりと浮かび上がった。
2月1日は旧正月です。伝統的な祝日ですが、社会の変化とともに、その過ごし方や売れ筋商品にも変化が起きています。アリババグループの旧正月商戦の販売データをもとに、中国旧正月の新消費トレンドをご紹介します。
日本では鏡もちや門松といった正月飾りや、お餅やおせち料理が正月の代名詞です。中国では旧正月に必須のアイテムを「年貨」(ニエンフオ)といいます。幸福を呼び寄せる飾り付け、家族だんらんのお伴となるピーナッツやヒマワリのタネなどが定番です。
しかし、90後(1990年代生まれ)など若者たちが年貨商戦の主役となりつつある今、新たな売れ筋商品も生まれています。その一つがロボット掃除機。年末の大掃除は重労働で、掃除機がけ、雑巾がけで腰が痛くなったという人も少なくありません。新しいロボット掃除機は雑巾がけ機能が付いているものもあり、家事の手間を大きく減らしてくれます。「怠け者のための神アイテム」として、売上は急上昇しています。
カプセルトイ(中身が見えない状態で販売されている、人形などの玩具)も人気の新年貨。浙江省杭州市で働く舒さんも購入者の一人です。「10個入りのセットで200~300元(約3,600~5,400円)と手軽な価格です。子どもたちに分けてあげられるし、箱を開ける時に何がでるかわからないドキドキがあって盛り上がります」と、人気の理由を話しています。
旧正月商戦では寝具も人気です。アリババグループのマーケットプレイス「Tモール」(天猫)の旧正月セールのデータを見ると、ギフト、結婚祝い、父母や子どものための買い換えといった理由でよく売れています。今年、若者たちの間で人気となったのは「ネコ触感の布団」。ミルク繊維など手触りのいい材料で作られた布団やシーツで、販売店は「ネコを触っているかのような柔らかさ、ネコを抱いているような暖かさ」とのキャッチコピーで販売しています。「寒くなる前に買って良かった!」「睡眠の幸福感がアップした」と消費者の反応も上々です。
また、データからは若者は厚手の布団を好み、年長者は軽い布団を好むという傾向がわかりました。Tモール寝具カテゴリーの担当者・潘夢(パン・モン)は、「ミルク繊維、ネル、羊毛などが若者には人気です。厚手で、くるまると安心感のあるものが好まれます。年長者向けでは、以前は綿が売れ筋でしたが、圧迫感があると嫌う人が増えてきました。軽くて暖かい羽毛ぶとんが新たな売れ筋です」と、世代による違いを解説しています。
旧暦大みそかに家族そろって一緒に食べるご飯を「年夜飯」(ニエンイエファン)と言います。いわば、中国版おせち料理です。アリババグループの旅行サービス・プラットフォーム「フリギー」(飛猪)によると、新型コロナウイルスの感染者がでていない地域では、大みそかはホテル・レストランに集まろうという人が多く、予約が伸びています。特に、広州市、上海市、南京市、青島市などの主要都市で好調です。
家族や親族が集まっての大宴会は食事の準備に手間がかかりすぎると、ホテルで豪華な食事を楽しむのが年夜飯の新たなトレンドですが、新型コロナウイルス対策のためになるべく大人数での食事を避けるべきと呼びかけられています。そこで生まれた新たなニーズが「テイクアウト式年夜飯」です。ホテル・レストランのご馳走を持ち帰って、自宅で楽しもうというわけです。
また、簡単に作れる半製品やソースなども、ネットショッピングモールの人気商品となりました。アリババのショッピングサービス「タオバオ」(淘宝)では1月9日、10日の食品半製品の売上は全年同日比で倍増以上という高成長です。半製品を賢く使えば、さほど時間をかけなくても料理できると、若者たちは手作り年夜飯に挑戦するようになりました。
Tモールの販売データによると、上海市、江蘇省、浙江省が食品半製品を最も多く購入する地域です。しかし、このトレンドは北京市や山東省など他の地域にも広がりつつあります。
2022年は多くの老舗料理店が年夜飯向けの半製品を発売しています。ブランド別売れ筋トップ10の半数は老舗料理店です。新雅、知味観、松鶴楼、天福号、杏花楼など、中国全土でよく知られた有名ブランドがランクインしました。
*レートは1人民元=18円で計算。
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