テスラの人型ロボット「Tesla Bot」に見る未来
筆者は、少なくとも映画の世界でのロボットが大好きだ。SF映画の名前を挙げてもらえれば、その映画に登場したロボットの名前をすらすら言えるはずだ。人を支援するロボットや、労働を担うロボット、人と話をしてアドバイスするロボット、冗談を言うロボット、癒やしを提供するロボット、そしてもちろん拷問や「殺人」を遂行するロボットなどだ。
筆者は、これらそれぞれのタイプごとにお気に入りのロボットを挙げることができる。しかしそれは映画の中だけの話だ。Boston Dynamicsが最近公開したロボットのデモ動画を視聴した読者もいるだろう。あのようなロボットが家の中を走り回ったり、自分の子どもと遊んだりすることを望む人などいるだろうか。筆者の同僚であるDavid Gewirtz氏も、それはまずいと考えている。
ほとんどの人々にとって、本格的な自律型ロボットは未来の夢物語にすぎないはずだ。現在のコンシューマー向けロボットは、床の掃除をしたり、プールのゴミを取り除くといった、ごく平凡な作業をしているだけだ。そして筆者のShark製掃除機も愚直であり、何の害ももたらさない。
SpaceXの創業者であり、Teslaの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)であるElon Musk氏は、こうした状況を変えたいと考えている。同氏は米国時間8月19日に新たなヒューマノイド(人型)ロボット「Tesla Bot」を発表し、その機能や仕様について語った。Teslaはこのロボットを向こう数年以内に提供したいと考えているという。
Musk氏は、Tesla Botのプロトタイプを2022年に完成させる予定だと述べている。Tesla Botは身長が約5フィート8インチ(約173cm)、体重が約125ポンド(約57kg)、顔がディスプレイになっており、「危険な作業や、反復的な、あるいは退屈な作業」を担うロボットとして設計されるという。また、約45ポンド(約20kg)までの荷物を運ぶことができ、持ち上げるだけなら両手で約150ポンド(約68kg)を引き上げられ、伸ばした片手で約10ポンド(約5kg)までの物を運べる。
こうした仕様を見る限り、Tesla Botはほとんどの人間を肉体的にしのぐほど強靭(きょうじん)というわけではない。だがこのロボットは、Teslaの自動車が自律走行のために採用しているコンピュータービジョンおよび人工知能(AI)と同じテクノロジーを搭載する。
Tesla Botがどのような見た目になるのかについてはだいたい想像がつく。というのも、発表の場では白いウェットスーツのような衣装を身につけた人間が登場し、TV番組「サタデー・ナイト・ライブ」で見かけるようなダンスパフォーマンスを披露してくれたためだ。ただ、バッテリーや自動車、ソーラーパネルで知られる企業がまったく新しい製品分野への参入を発表する際に、情報提供ではなく笑いをさそうやり方を選択したという点で、このセンスには違和感を感じた。