アクセンチュアが「経営者に必要な5つのテクノロジートレンド」を公開 30ヶ国6千人の企業幹部の最新調査レポート
アクセンチュア株式会社は、2021年に企業が押さえるべきテクノロジートレンドの最新調査レポート「Technology Vision 2021」についての記者説明会をオンラインで開催した。
コロナ禍で社会の規範が大きく揺らいだ。リーダー達は「融通の利かない就労形態」「脆弱なサプライチェーン」「信憑性の低い情報」「顧客の新しいニーズ」等に目を向けてニューノーマルを見据えるべき今回の「Technology Vision 2021」では、新型コロナウイルスの感染拡大によって、あらゆる業界で急変する市況や顧客ニーズへの対応が急務となっていることを掲げ、このような状況において重要となる5つのテクノロジートレンドを定義、業界をけん引するリーダー像を解説した。この調査結果は、アクセンチュアが日本を含む31カ国6,200人以上の企業幹部への調査を実施したもの。
あらゆる業界で急変する市況や顧客ニーズへの対応が急務解説はテクノロジー コンサルティング本部の山根氏が登壇しておこなった。山根氏のプレゼンテーションでは、具体的に企業の成功例やリーダー名を挙げたものになっていた。
アクセンチュア株式会社 テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントソフトウェア エンジニアリングサービス グループ日本統括 マネジング・ディレクター 山根 圭輔氏5つのテクノロジートレンドとは「テクノロジーの戦略的集積」「ミラーワールド」「一人ひとりがテクノロジスト」「あらゆる場所が仕事場に」「「個」から「全体」へ」の5つ。これら5つのテクノロジーのトレンドはすべて、3つのステップで展開していくことを提案した。3つのステップとは「Fortify」(堅牢化)、「Extend」(拡張)、「Reinvent」(再発明)だ。「テクノロジービジョン 2021」は、今後3年間でビジネスや業界に大きな影響をもたらす重要なテクノロジーのトレンドを予測したもの。今年で21回目となる年次調査レポートで、今回は「熱望されるリーダーとは ? 変化を捉えて主導すべき時(Leaders Wanted: Masters of Change at a Moment of Truth)」と題し、リーダー企業がどのようにして10年分のデジタルトランスフォーメーションを 1~2年間で成し遂げているのかを明らかにしている。アクセンチュアの調査によれば、リーダー企業は、デジタルをビジネスの中核に据えて素早いイノベーション創出の体制を構築することで、デジタル活用に出遅れた企業に比べて5倍のスピードで収益を伸ばしており、2015~2018年の期間ではこの差が2倍に留まっていたことが分かっているという。その結果、多くの企業はテクノロジーイノベーションを用いて自社ビジネスの再創造を図ろうとしているとしている。
5つのテクノロジートレンドに話を戻すと、第1の「テクノロジーの戦略的集積」にはPayPayを例に挙げた。開発期間わずか3ヶ月でサービスを構築し、従来サービスを含めて統合し、2年間で3,300万人規模に拡大した手法を評価している、とした。また、AWSクラウドを使って最初のステップで要塞化(堅牢化)している点も特筆点だと付け加えた。ほかにも三越伊勢丹、UBER、Netflixなどの事例にも触れた。そして「テクノロジーの戦略的集積」の理想のリーダー像として、株式会社ディー・エヌ・エー南場氏をあげ、インフラエンジニアの育成と活躍の促進に注目している、とした。
昨今は「デジタルツイン」というワードが注目されている。リアルと仮想の2つの世界を持ち、現実社会をシミュレーションすることで課題や失敗を予め想定してソリューションを展開する手法だ。BMWが自動車の生産工場をデジタルツインで生成し、仮想世界をNVIDIAのプラットフォームを使って実現したニュースはロボスタでも取り上げた。今回の「ミラーワールド」はデジタルツインを繋ぐ世界を定義したもの。ミラーワールドの最大の利点は、シミュレーション環境では、リアル世界のリスクなしに新しい試みを実践することができることだ。それを奇しくもコロナ禍が証明して見せたという。コロナ禍に突入したことで、Amazonの検索ワードのトップ10が、わずか一週間でコロナ関連のものに急変した。そして、コロナ禍は社会にとって未曾有のもので、過去のデータが役に立たない環境を作りでしてしまった。そこには過去例や実績から推測するAI推論も役には立たない。経験のない世界のよりのどころとなるのがシミュレーションだ。いかにリアルタイムにデータを収集して、システムが作りだしたリアリティがある架空の合成データとで正確にシミュレーションするかにかかってくる。「ミラーワールド」の理想のリーダー像としてオードリー・タン氏をあげた。
「一人ひとりがテクノロジスト」では、神戸市の職員がコロナ関連情報提供アプリをひとりで構築して提供したことを成功例として挙げた。また、“全社員SE化”を掲げ、IT部門はビジネスの最前線に立つべきとしたヤンマーの取り組みを紹介した。理想のリーダー像には、バングラデシュの経済学者で実業家、ノーベル平和賞(2006年)受賞者のムハマド・ユヌス氏を挙げた。
コロナ禍で急速にテレワーク化が進み、コロナ後に元のオフィス事情には戻らないだろう、という意見は多い。ここでも同様に、オフィスワークからテレワークへの常態化に備え、対応していくことの重要さが解説された。事例としては、Microsoft : Workplace Analytics、同志社大学、Stripe、GMOパペポ等が紹介された。「新しい職場」は「新しい機会」と捉え、新しいチャンスにビジネスを変革していくことに勝機があるとしている。理想のリーダー像として、Linuxカーネルを開発し、一般公開したことで知られるリーナス・トーバルズ氏を挙げた。
「個から全体へ」は、マルチパーティシステム(MPS)の導入を推奨するもの。マルチパーティシステムは、いわば独占的な巨大プラットフォーム依存に反発するもので、複数の組織がエコシステムとして協働で構築していくシステムをさす。ただし、クラウド利用を否定するものではなく、むしろ各企業が独自開発してきたユニークなシステムからクラウド化への移行を進めることで、パートナーとの連携がしやすくなり、ビジネスを最大化・効率化するための提携を促す考え方になることが予測できる。貿易金融のデジタルプラットフォーム「マルコ・ポーロ・ネットワーク」と「TradeIX」のアプローチ事例を紹介した。求められるリーダー像は、人ではなく「TED」(TEDx)を挙げた。「広める価値のあるアイデア」(Ideas worth spreading)を共有するコンセプトを評価し、拡大可能なしくみをデザインできるリーダーを指したものだ。以上が、アクセンチュアが掲げた5つのテクノロジートレンドの概要だ。詳しく解説することは紙面の都合上できないが、トレンドのキーワードが各自で調べられるとっかかりにできるように、なるべく多くのスライドで紹介した。ビジネスによって必要なテクノロジーやオフィス環境は異なるが、これからの3年間のビジネスを考える参考になるのではないだろうか。
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