CDが苦戦しているのに、なぜ曲を取り込む「ラクレコ」は売れているのか
ラクレコが売れている
CD市場が縮小している。日本レコード協会によると、2011年の売り上げは2085億100万円だったが、20年は1269億3700万円に。この10年で市場は40%ほど縮小したわけだが、その理由はいくつかある。ご存じのとおり、楽曲をダウンロードしたり、サブスクの配信サービスで聴いたり、多様化していることが挙げられる。【ラクレコ本体を見る(9枚)】 スマホや音楽プレーヤーなどデジタル機器で聴く人が増えてくると、オーディオ機器が低迷してしまう。かつて家電量販店に足を運べば、CDプレーヤーやオーディオコンポがたくさん並んでいて、「盛り上がっているなあ」といった印象を受けていたが、いまは「ちょっと寂しいなあ」という感じ。いわゆる“CD離れ”が加速しているなかで、「逆行しているのではないか」と感じられるアイテムが人気を集めている。スマホ用CDレコーダーの「ラクレコ」(RR-C1-WHの価格は9900円、バッファロー)だ。 ラクレコの特徴は、CDの楽曲をスマホに直接取り込むことができること。CD1枚(60分)の取り込みにかかる時間は5分ほどで、取り込んだ曲は専用アプリで管理・再生ができる。取り込んだ曲名、アーティスト名、ジャケット写真をネットから自動的に反映させるので、わずらしい入力は不要になる。 ……と、ここまで書いてみたものの、音楽をデジタルで聴いている人にとっては全くササらないだろう。「ワタシには不要ね」と思うだろうし、「いまの時代にそんなモノ必要なの? 誰が買うんだよ」とあきれた人もいるはず。 しかし、である。今年の6月に発売したところ、想定の2倍ペースで売れているという。SNSでの反響も大きく、「コレ、めっちゃ欲しかったやつ~」「必需品すぎる」「パソコン持ってないし、これは使う」といった好意的なコメントが相次いでいるのだ。
好調の要因は3つ
繰り返しになるが、CD市場は右肩下がりである。音楽をどのような方法で聴いているのかという調査でも、「YouTube」が最も多く、次いで「テレビ」「サブスクの配信サービス」である。そんな状態なのに、なぜCDをスマホに取り込むアイテムが売れているのだろうか。開発に携わった同社の担当者に聞いたところ、3つの理由が浮かんできた。 1つめは、家で眠っているCDの存在だ。若いころに購入したCDがあるものの、自宅にオーディオ機器がない。パソコンで聴こうと思ったら聴けるが、「面倒だな」「移動しながら聴きたい」という気持ちがあって、ケースにほこりがたまったまま。たくさんあるCDをそのままにしておくのはもったいないので、“整理整頓の一環”として、購入している人もいるようだ。 ただ、しっくりこない点もある。家にあるCDをすべて取り込めば、それで終わりだ。ケースには再びほこりがたまってしまうし、本体も使わない状況になる。となると、「中古のラクレコを買って、またそれを売ればいいんじゃないの?」と思ってしまう。や、ちょっとイジワルなことを考えてしまったが、こうした使い方をしている人もいそうである。 2つめは、サブスクの配信サービスに“モレ”があることだ。どういう意味かというと、自分が好きなアーティスの曲が聴きたいのに、その人の曲が配信されていない、または好きな曲が聴けないケースがある。そうした人たちはCDを買って、曲を取り込んでいるようだ。 ふむふむ、個人的にこれはよーく分かる。筆者も某サブスクのサービスを利用しているが、日本人アーティストのNさんの曲を聴こうとしたところ、配信されていなかったのである。「絶対に聴きたい」と思ったわけではないので「ま、いいか」とあきらめたが、熱狂的なファンは違う。CDを購入して、“モレ”なく音楽を聴く。そうした層にも、ラクレコはウケているようだ。 3つめは、「推し活(おしかつ)」需要である。推し活とは、好きな芸能人やアーティストを応援することを意味するが、なぜこうした層にウケているのだろうか。2つめの理由と重なる部分があるが、推しているアーティストのCDが発売されても、サブスクで聴けるのは後日、またはそのCDに入っている曲すべては聴けないといったケースがある。しかし、ファンにとっては、少しでも早く聴きたいし、すべて聴きたいと思う。 実際、〇月〇日、ラクレコの売り上げが大きく伸びた。同社の担当者は「ん? なぜ?」と気になって、いろいろ調べたところ、たどりついたのが某アイドルのCDが発売された日だったのだ。あと、ラクレコにCDを取り込むことによって、ビルボードジャパンの「ルックアップ」チャート(CDをパソコンなどの機器で、グレースノートメディアベースを使用したソフトで読み取った回数)に集計されるので、お気に入りアーティストを応援することができる。こうしたファンのココロをつかむ機能を搭載していることも、好調の要因として挙げられる。
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