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「最強の独学術」にある成功の方程式。_極貧のなか、独学で東大&ハーバードに合格! /学びのイノベーター・本山勝寛

お話を聞いたのは、「学びのイノベーター」を名乗る、日本財団子どもサポートチームリーダーの本山勝寛さん。本山さんは、高校時代にアルバイトで自活しながら独学で東大に現役合格し、その後はハーバード大にも合格したという「独学のスペシャリスト」です。

■独学成功の最大のポイントは「事前の戦略」

結果的に独学で東大、ハーバード大学院に入ることになったわたしですが、それは単純に独学せざるを得なかったからです。中学に入る直前に母が亡くなり、高校生になると父も家からいなくなりました。父は慈善事業が生きがいのような人で、ボランティアのためにある途上国に行ったのです。

家に残されたのは、わたしと妹のふたり。高校1年から2年までのあいだのほぼ毎日、学校が終わったらうどん店でアルバイトをするようになりました。

そんななか、3年生になる直前の春休みに東大受験を決意しました。きっかけは、漫画『おーい!竜馬』と、司馬遼太郎さんの時代小説『竜馬がゆく』を読んだことです。坂本龍馬のように、「日本の国をよくするようなことをしたい!」という情熱が湧いてきたのです。

そして、そうするためにはどうすればいいかと、世間知らずだった10代のわたしが考えて出した答えが、東大に行くことでした。「リーダーや指導者を社会にたくさん輩出している大学に行くべきだろう」というわけです。

大半の東大志望者より、かなり遅れての決意です。当然ながら、猛勉強をしなければなりません。勉強時間を確保するため、アルバイトもやめて月に1万4000円ほどの貸与型奨学金だけが頼りという生活になりました。ときには料金を払えず電気を止められるということもありましたね(笑)。もちろん、塾や予備校に通う経済的余裕などありません。こうして、わたしは独学で東大を目指すことになったのです。

もちろん、参考書や問題集にかけられるお金も限られていますから、東大合格のためになにをやるべきか、どの参考書や問題集を買うべきかを徹底的に考える必要がありました。そこでまず手にとったのが、東大合格者の体験記を集めた本でした。成功事例の研究をして、やるべきこと、買うべき参考書や問題集を決めようと考えたのです。

その本には、東大合格者がどんなタイミングでどの教科の問題集をどのくらいの時間をかけてやったのかといったことが書かれていました。もちろん、中高一貫校出身でもともと成績がよく予備校にも通っていたような、わたしとは境遇がかけ離れた人の体験談はあまり参考になりません。

わたしと同じように地方の公立校出身で、予備校にも通っていなかったような人の体験談から共通したパターンを割り出し、東大合格までの戦略を練りました。

■独学成功の方程式「成果=戦略×時間×効率×地頭」

このことにも表れていますが、独学を成功させる最大のポイントは「しっかりと戦略を練って実行する」ことにあります。わたしは、独学を成功させる方程式とは「戦略×時間×効率×地頭」だと考えています。これら4つの要素をかけ合わせることで、勉強の成果が決まるのです。

【独学を成功させる方程式】

勉強の成果=戦略×時間×効率×地頭

あたりまえですが、成果を挙げるにはある程度の時間をかけて勉強しなければなりません。でも、ただ勉強をすればいいというわけではない。立場はどうあれ人に与えられた時間は有限ですから、勉強の効率をできるだけ高める必要もあります。また、より短時間で効率的に成果を挙げるには地頭を磨いていくことも大切です。

そして、4つの要素のうち「戦略」は、他の3つの要素を高めるためにも大きくかかわってくるものです。勉強時間を確保することにも、勉強の効率や地頭を高めていくことにも戦略が必要ですよね。戦略こそが、独学を成功させる最大のポイントになるのです。

わたしの場合、東大受験のときもハーバード大学院を目指したときも、それぞれの合格者の体験記から戦略を練りました。みなさんが行う勉強の内容にもよりますが、それと同じようなことは、たいていの勉強においてやれることです。

英語の勉強をしていて「TOEICで900点以上」という目標を持っている人なら、先にその目標を達成した人の体験記といったものはネット上にあふれています。インターネットが浸透したいまは、成功事例の研究には苦労しないでしょう。

「最強の独学術」にある成功の方程式。_極貧のなか、独学で東大&ハーバードに合格! /学びのイノベーター・本山勝寛

そうして先人たちの成功事例を研究することのメリットは、しっかりした戦略を練られることにとどまりません。成功事例の研究を通じて、目標達成までの道筋をしっかりイメージし、モチベーションを高められることにもつながります。

合格者の体験記には、目標達成までのあいだに経験した苦労や失敗も書き連ねられています。いくら綿密に戦略を練ったとしても、完璧に戦略どおりに勉強できるわけはありません。でも、先人の体験記を読んでおけば、スランプにおちいったり、そのために戦略を変更したりしたとしても、「こういうこともある」「でも、めげずに頑張れば必ず目標を達成できる!」と、努力を続けられるのです。

■1日10分からはじめ、徐々に勉強を習慣化する

では、勉強の成果を左右する残りの3つの要素である、「時間」「効率」「地頭」について順に解説していきます。

まずは「時間」について。自活しながら東大を目指していたわたしもそうでしたが、働きながら勉強をする社会人にとっても勉強時間の確保は大きな課題でしょう。限られた時間のなかで勉強時間を確保するための大きなポイントが、「習慣化」です。

習慣として定着したことは、さほど頑張ることも考えることもなくできてしまうのが人間という生き物です。朝起きて顔を洗うということを、「よし、頑張って顔を洗おう!」などと考えてやっている人はいませんよね?

仕事についてもそうでしょう。週に5日、1日8時間以上の仕事をすることも、あらためて考えたらなかなか大変なことではないですか? でも、社会人のみなさんはそれがあたりまえのようにできています。それこそが、習慣化の力です。

社会人のみなさんには、平日と休日それぞれの勉強習慣を身につけることをおすすめします。なぜなら、平日と休日で生活リズムがちがい、勉強にあてられる時間もちがうからです。

いまのわたしは、毎日朝5時に起きて、平日の起床後2時間ほどをインプットとアウトプットの時間にあてています。それと同じように、平日の朝の時間を活用するのもいいでしょう。あるいは、通勤中の時間を使うのも手です。コロナ禍によってテレワークになった人なら、これまでの通勤時間を丸々使えるのですから、余裕を持って勉強習慣を生活のなかに組み込めるのではないでしょうか。

また、平日よりフリーに時間を使える休日には、まとまった勉強時間をあらかじめ設定しておきましょう。東大を目指していたときのわたしは、休日には12時間くらい勉強をしていました。本気で勉強しようと思えば、休日を活用しない手はありません。

でも、最初からそんな長時間の勉強習慣を定着させようとすることはおすすめしません。習慣化の恩恵は大きいものの、習慣化すること自体がそう簡単ではないからです。確実に習慣化させるためのポイントは、「少しずつ徐々に慣らしていく」こと。

これまでまったく勉強していない人だったら、1日10分の勉強からはじめてもいいでしょう。それだってゼロと比較すると大きな進歩なのですから。慣れてきたら、30分、1時間と増やしていけばいいのです。

■勉強の基礎はいまもむかしも「読み書きそろばん」

続いて、「効率」について解説します。働きながら勉強する社会人にとっては、勉強時間を確保することと同じように、限られた時間のなかで勉強の効率を高めていくことが求められます。いまなら、そうするための方法は明白ですよね。「ネットから離れる」ことに尽きます。

いま、勉強や仕事など、やるべきことに対する集中力を削ぐ最大の敵がネットです。スマホにはSNSをはじめとしたアプリからの通知が次々に届きます。その都度、反応していては勉強に集中できず、効率は下がる一方です。勉強するときには、スマホはサイレントモードにして自分から離れた場所に置いておきましょう。いっそ、電源を切ってしまってもいいかもしれませんね。

また、集中力には限りがありますから、勉強する時間の単位、上限を決めておくことも意識したいポイントです。集中力が切れている状態で無理やり勉強をしても、効率は下がるだけ。先に解説した習慣化と合わせて、勉強時間を徐々に伸ばしながら、自分の集中が続く時間を探っていきましょう。

わたしの感覚からすると、本当に集中できる時間は最大1時間というところでしょうか。1時間に1回は休憩してリフレッシュし、集中力を取り戻す。さらに、休憩する時間や過ごし方もあらかじめ決めておき習慣化できると、だらだらといつまでも休憩するようなことがなくなります。

最後は、「地頭」について。生まれついてのものだという側面もたしかにありますが、誰かと比べるのではなく、現時点より少しでも自分の地頭を磨いていくことが、自分にとっての勉強の成果につながることは間違いありません。

そうするためには、とにかく頭をしっかり使うことが大切です。頭も筋肉と同じように使わなければ衰えますし、逆に使えば使うほど鍛えられます。そのための方法としては、「読み書きそろばん」が最適だとわたしは見ています。むかしからいわれるように、これらがやはり勉強の基礎なのです。

参考書などの内容を理解するためにも必要な読解力は、それこそ基礎中の基礎です。地味かもしれませんが、地道に読書を続けましょう。そのとき、読んだ本の感想をSNSに書き出すといったアウトプットも意識してみてください。本の内容をしっかり理解して頭のなかで整理しなければ、アウトプットはできません。アウトプットを前提とすることで、吸収力が高まりインプットの質も高まっていくのです。

地頭を磨く「読み書きそろばん」の最後にあたる「そろばん」については、数字を使ったゲームといったアプリで遊ぶことでもいいでしょう。でも、わたしからいちばんおすすめするのは、スポーツなど自分の好きなものについて、数字を使って自分なりに分析するということ。

たとえば野球などのスポーツにおける各種成績の数字を分析し、監督になったつもりで選手の起用法など自分なりの戦略を考えてみる。そういうことが、ただ計算をするといったことよりも、数字を扱う能力をはるかに高めてくれます。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

本山勝寛

もとやまかつひろ

1981年生まれ、大分県出身。学びのイノベーター。本山ソーシャル・イノベーション塾(MSI塾)塾長。日本財団子どもサポートチームリーダー兼人材開発チームリーダー。高校時代、アルバイトで自活しながら独学で東大に現役合格。東京大学工学部システム創成学科卒業後、ハーバード大学教育大学院国際教育政策専攻修士課程を修了。現在は日本財団にて子どもサポートチームリーダーと人材開発チームリーダーを務めるともに、少子化問題、奨学金問題、子どもの貧困問題などについて評論活動を行う。5児の父で育児休業を4回取得。自身の経験を基にした勉強法、教育論などについての執筆活動にも積極的に取り組む。『そうゾウくんとえほんづくり』(KADOKAWA)、『最強の暗記術』(大和書房)、『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』(ポプラ社)、『最強の独学術』(大和書房)、『一生伸び続ける人の学び方』(かんき出版)など著書多数。

『自力でできる子になる好奇心を伸ばす子育て』(大和書房)

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