ソニー、「エンタメ」分野でM&Aが止まらない! - M&A Online - M&Aをもっと身近に。
ソニーグループがM&A市場で気を吐いている。主戦場はゲーム、音楽、アニメなどのエンターテインメント分野だ。この1年間のM&Aは主なもので6件に上り、1000億円超える大型案件も2件含まれている。
米ゲーム事業を1100億円で売却
ソニーグループは10月19日、米映画子会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)の傘下企業が手がけるオンラインゲーム事業を米スコープリーに約10億ドル(約1100億円)で売却すると発表した。スコープリーは急成長中のモバイルゲーム会社の一つ。売却対価の半分は優先株で受け取り、将来期待される株式公開などを含めた同社の成長力を取り込む。
売却するのはSPE傘下の米テレビ制作会社ゲーム・ショー・ネットワークのゲーム事業で、スマートフォン向けのトランプゲームやビンゴなどカジノ系を得意とする。トランプゲーム「Solitaire(ソリティア)」は毎週1億回以上プレイされているという。
ソニーが持ち株会社制への移行に伴い、ソニーグループに社名変更したのは今年4月1日。複合企業化したグループを束ねる司令塔としての役割を明確にするのが狙いで、ソニーの名前は祖業であるエレクトロニクス事業を担う子会社が引き継いだ。
エンタメ事業などで2兆円の投資枠
同社は2021年度から今後3年間でゲーム、アニメなどエンターテインメント事業の知的財産権(IP)や先端技術の獲得に2兆円以上を充てる投資枠を設けている。このうちM&Aへの配分額は明らかではないものの、潤沢に資金を振り向けるとみられる。
M&Aへのアクセル全開が一目瞭然となったのはここ1年。昨年12月、米通信大手AT&Tの子会社でアニメ配信事業「クランチロール」を運営する米イレーション・ホールディングスを約1222億円で買収する発表した(2021年8月に買収完了)。クランチロールは200以上の国・地域でアニメ、ドラマ、マンガなどの映像コンテンツやモバイルゲームを配信している。
今年に入ると2月、米音楽出版社コバルト・ミュージック・グループが展開する音楽配信サービス「AWAL」事業と著作隣接権管理事業を約452億円で買収することを決めた。「AWAL」はメジャー(大手)に属さないインディーズ(独立系)アーティストを主な対象とし、アーティスト側は初期費用が発生せず、配信収益から一定の手数料を支払う仕組み。
4月の持ち株会社への移行でさらにM&Aに拍車がかかった格好だ。約282億円を投じて、ブラジルの独立系音楽会社ソンリブレを買収すると発表した。ブラジルの人気アーティストや楽曲を世界に売り込むのが狙い。
もっともエンタメ分野だからといって買収一辺倒というわけではない。買い手と売り手を巧みに演じ分けている。
今回の1000億円を超える米ゲーム事業の大型売却にみられるように、事業の入れ替えにも余念がない。今年は他に、ミステリードラマ専門チャンネルのミステリーチャンネル(東京都港区)など3つの衛星放送事業子会社を家電量販店のノジマに売却している。
インド放送大手との合併に暗雲も
インド子会社と現地放送大手Zee(ジー)の合併計画を発表したのは9月。ソニーは約1720億円の成長資金を拠出し、合併新会社の過半数の株式を取得するという。人口13億人を抱えるインドでメディア・コンテンツ事業を展開し、巨大市場を取り込む。ただ、Zeeの大株主の米投資会社インベスコが合併に反対を表明しており、暗雲も漂っている。
ソニーの2022年3月期業績予想は売上高7.8%増の9兆7000億円、営業利益2.6%増の9800億円。8月段階で売上高は従来予想を据え置いたが、営業利益は上方修正し、一転増益を確保する見込み。好調な業績を背景に、ポスト・コロナを見据えてM&A戦略は一層加速しそうだ。
◎ソニーグループ:この1年間の主なM&A(金額は当初発表時)
発表月 | 内容 | 金額 |
2021年10月 | 米モバイルゲーム事業を米スコープリーに売却 | 約1100億円 |
9月 | インド子会社と現地放送大手Zeeの合併計画を発表 | ー |
8月 | 衛星放送事業子会社3社を家電量販店のノジマに売却 | 非公表 |
4月 | ブラジルの独立系音楽会社ソンリブレを買収 | 約283億円 |
2月 | 米コバルトから音楽配信サービス「AWAL」事業を買収 | 約452億円 |
2020年12月 | 米AT&T傘下でアニメ配信事業「クランチロール」の運営会社を買収 | 約1222億円 |
文:M&A Online編集部