藤本健のソーラーリポート 巻き取って持ち運べる太陽光発電器 「どこでも発電 緊急災害セット」を使ってみた
どこでも発電 モバイルソーラーユニット 緊急災害セット GSR-111B-S1 |
いざというときのための非常用電源として、太陽光発電システムを持っておきたい……、そんな思いの人も少なくないはず。しかし、あまり小さなものでは役に立たないし、そこそこの出力を備えたものは価格が高くて手が出せない。また、大きいと保管しておく場所がない。
そんな中、気になる製品を見つけた。オーエスが開発し、ヨドバシカメラなどで販売されている「どこでも発電 モバイルソーラーユニット」という製品だ。これはフィルム状の巻き取り式太陽電池で発電するというもので、使わないときは巻き取ってコンパクトな状態で収納しておけるのだ。
今回、どこでも発電シリーズのひとつである「緊急災害セット GSR-111B-S1」というものを使う機会が得られたので、さっそく試してみた。
メーカー | オーエス |
製品名 | どこでも発電 モバイルソーラーユニット緊急災害セット |
品番 | GSR-111B-S1 |
販売店舗 | ヨドバシカメラ |
販売価格 | 49,900円 |
■普段は収納、使う時だけ太陽電池シートを引き出す
太陽電池は本体内に入っており、取っ手を引っ張って取り出す |
緊急災害セットの本体である「GSR-111B」は、赤いアルミ製の細長い箱のような形状になっている。510×85×110mm(幅×奥行き×高さ)、重さ約2.8kgで、コンパクトなのでそれほど邪魔にならない。縦置きもできるから、部屋のコーナーなどに置いてもおくこともできる。
太陽電池はフィルム状で、取っ手を引っ張ると中からスルスルと出てくる。フィルムというよりも、ちょっと厚めのレジャーシートのような見た目だ。
家の中で広げても仕方ないので、日当たりのいい、近所の公園へ持っていって伸ばしてみた。引っ張り出したシートの長さは約1m。掃除機の巻取り式コードと同じように、一度強く引っ張ってから手を離すとスルスルと巻き取られていく。また、シートを伸ばした状態で丸まってしまわないように、中央がやや谷になるような形で湾曲している。グニャッと曲げることもできる(あまり強く曲げるのは禁物)。
色は、表が紺色、裏側が白っぽいグレーで、紺色のほうを太陽に向けると発電できる。
太陽電池のシートを取り出したところ。紺色が電池表面だ | シートを最大まで取り出したところ。長さは1mだ | 近所の公園のベンチにすっぽりと収まる |
シートはグニャッと曲がる | シート裏側はグレー |
しかし改めて考えると、シート状の太陽電池というのは、従来の「太陽電池はパネル状の硬いもの」という概念を崩す、ユニークなアイディアだ。この太陽電池がこのように柔らかいのは、薄膜の太陽電池だから。住宅の屋根に置かれている単結晶シリコンや多結晶シリコンのパネルではなく、電卓などに使われているアモルファス(非結晶)シリコン太陽電池となっている。アモルファスシリコン太陽電池は、温度が高い条件下でも発電効率が落ちないこと、比較的安く製造できるというメリットがある。一方で、発電効率は結晶系シリコン太陽電池と比べて低いという欠点もある。
■太陽電池に加えて充電池も搭載
本製品はこの太陽電池シートのほか、ニッケル水素のバッテリーが内蔵されている。太陽電池でバッテリーを充電し、その電力を使うことで、夜、室内に持ち帰っても使えるというのが大きな特徴だ。
電池容量はDC12V 2.0Ah(約20Wh)。20Whとは、理論的にいえば20Wの機器を接続すれば1時間使え、5Wの機器であれば4時間使えるという容量になる。あまり大きな機器を動かせるというわけではないが、いざというときに携帯の充電をしたり、ランプをつけたり、ラジオを鳴らしたり、という用途には十分使えそうだ。
また、本製品にはACアダプタも付属している。なぜ太陽電池にACアダプタ? と不思議に思う方もいるかもしれないが、いざというときの備えとして内蔵バッテリーを確実に充電しておくために使用する。
バッテリーの充電状況はボタンを押すとLEDランプが緑、オレンジ、赤の3色で点灯する。手元に届いたときには緑色で、フル充電状態だった。
内蔵の電池を確実に満充電にするためのACアダプタも付属する | 充電状況はカラーLEDランプで表示される。充電容量が多い順に緑→オレンジ→赤になる |
■付属のLEDランタンや、USBによるケータイの充電はまったく問題なし
付属のLEDランタンを、シガレットソケットに差し、点灯しているところ |
さて、この本体からどうやって電気を取り出すのか。その唯一の取り出し口が、本体のシガレットソケットだ。扱いづらい感じもあるが、汎用性を考えると確かにこれが便利なのかもしれない。
本製品には付属品として、充電式LEDランタン、USBハブ、携帯電話充電ケーブルがセットとなっており、充電式LEDランタンとUSBハブには、シガレットソケットがついている。
さっそく、LEDランタンを繋げてみると、問題なく点灯した。ランタン側にもニッケル水素電池が4本入っているので、これを充電しながらLEDを光らせるという形になっている。ランタン側はフル充電で約50時間使えるというので、いざというときには頼りになりそうだ。
携帯電話充電ケーブルは、NTTドコモやau向けなど、全4種類のアダプタがセットになっていて、USBハブのUSBコネクタに接続して使う仕様。ここではauのフィーチャーフォンに接続してみたところ、こちらも問題なく使えた。
USBならiPadにも接続できるはずなので、こちらも試してみた。以前、小型の太陽電池をiPadに接続したときには、電力不足で充電することができなかったが、さすがに20Whのバッテリーだけあって、iPadもしっかりと充電することができた。USB接続の電源としては、まったく問題なく使えるようだ。
各社携帶電話の充電コネクタも付属する | USBハブを使ってauのフィーチャーフォンに接続すると、問題なく充電できた | iPadも充電できた! |
■オプションのAC100Vでも使いたくなった
USBがちゃんと使えることが分かると、家庭用コンセント代わりにAC100Vでも使いたいという欲が出てくる。ここからはオプション品となる、出力100Wまで可能なDC-ACインバータ「G-A04」を使って、AC100Vが使えるかを試してみることにした。
ノートPCが使えると便利だなと思い、愛用のノートパソコン「VAIO」を接続してみたところ、問題が発生。GSR-111Bの本体から、「ピーピーピー」とエラー音が鳴ってしまった。インバータの出力電圧を見てみると、60Vあたりから90Vあたりを行ったりきたり。どうも出力オーバーで電圧降下が起こっていたようなのだ。
オプション品のDC-ACインバータ「G-A04」を使えば、家庭用コンセントも使用可能 | 起動中のノートパソコンを接続すると、本体からエラー音が鳴ってしまった | どうも出力オーバーで電圧降下が起こっていたようだ。VAIOの電源をOFFにした状態だと、問題なく充電できた |
改めてマニュアルを確認してみたところ、最大出力は20Wとある。ATOMの低電力VAIOなので、そんなに喰わないだろうと思っていたが、実際には電源オンの状態だと35W程度の消費電力となるため、容量オーバーとなっていたようだ。
そこで改めて、VAIOの電源をオフにして、単に充電だけを行なってみたところ、エラー音は鳴らずにうまく充電できた。
LEDスタンドも、最初は使えたが、5分ほどするとエラー音が鳴った |
今度は、もっと消費電力の小さいLEDスタンドを接続してみた。出力9Wなので問題はないはずだが、こちらも問題が起きてしまった。最初に電源を入れた状態では確かに点灯したのだが、5分ほど点けていると、やはり「ピーピーピー」とエラー音。電圧降下が起こってしまったのだ。明かりを使う場合は、付属の充電式ランタンを使った方が無難かもしれない
■連結すれば出力も容量もパワーアップ
このGSR-111Bのもう1つの特徴が、連結して出力や電池容量がアップできるところだ。
本体は、最大6つまで連結できる。2つ接続した場合は、バッテリー容量は40Whで、出力も40Wまで可能になる。3つなら60Whで60Wとなる。接続方法は簡単。シガレットソケットからの出力を、もう一台のACアダプタ接続用端子に接続するだけで完了だ。
また、太陽電池がなく、バッテリーだけのユニット「GSB-01」(ヨドバシカメラで17,120円)というものもある。容量は同じ2.0Ah(20Wh)で、これを接続することで、より多くの電気が使えることになる。
複数の本体を連結することも可能 | 外部接続用のバッテリーユニットも、オプションで販売される |
今回はGSR-111Bを2つとGSB-01を1つを連結させた状態で、先ほどのVAIOを接続してみた。しかし、やっぱり電源をつけたままでは使えなかった。ここで改めて、太陽の下で充電~発電しながら使ってみたら、今度は成功。インバータの出力電圧も、98.5Vと安定している。ここまでしてインバータを使うべきなのか多少疑問も残るところではあるが、太陽の威力というものが改めて感じられた。
太陽光が当たるところで、起動中のノートパソコンを接続したところ、今度は大丈夫 | 電圧も98.5Vで安定していた |
以上、「どこでも発電」というシート状の太陽電池についてレポートしてみたが、いかがだっただろうか。やはり、結晶系シリコン太陽電池と比較すると、出力が小さいのが気になるが、普段巻き取ってしまっておけるというのは、非常用電源と考えたときに大きなメリットだ。AC100Vを取り出すことはあくまでもオプションのようだが、基本性能である、ランプ用や携帯などを充電するというUSB接続の電源としては問題なかった。緊急時をしのぐための利用価値は十分あると感じられた。