在宅テレワーク「エアコン暖房」も換気に注意!
エアコン暖房は、空気を汚さない安全性の高さが人気です。部屋の密閉性を高め、節電を心がけている方も多いのではないでしょうか?
しかしここには落とし穴が。それは人の呼吸による二酸化炭素濃度の上昇です。特に近年の機密性を高めたエコ住宅では、「隙間風」による自然換気は期待できず、計画的な換気が必要で、怠ると最悪の場合、健康を害する恐れもあります。
テレワークなどで在宅時間が増加傾向にある方は、この冬、「二酸化炭素濃度」に注目してみてはいかがでしょうか?
この記事では、筆者自宅での実験結果と、家電を活用した解決方法を提案します。
■そもそも二酸化炭素は有害?
二酸化炭素は温室効果ガスの筆頭として注目を集めていますが、一般的に人体には無害と認識されています。しかし、濃度が高くなると健康に影響があるとされ、2003年に改正された建築基準法では、居室内の二酸化炭素の濃度が1,000ppm以下となるよう、全ての住宅に適切な換気設備(24時間換気システム)の設置を義務付けています。
【二酸化炭素濃度と人体に及ぼす影響の目安】(各種指標より独自に整理)
■実験!テレワーク時の二酸化炭素レベルは?
実際にテレワークを想定し、筆者の仕事部屋で、二酸化炭素濃度を測定してみました。比較的気密性が高い鉄筋コンクリート造りマンションの6畳間で、窓、扉、換気口を締め切り、大人1人が居るという状態です。
測定に使用した機材は、高精度とされるセンシリオン社製CO2センサー「SCD40」を搭載する、ラトックシステム株式会社のWi-Fi CO2センサー「RS-WFCO2」です。Wi-Fi対応で、二酸化炭素濃度をスマホのアプリ画面で確認することもできます。なお、近年はコロナウイルス対策として換気が推奨され、その目安となる二酸化炭素濃度測定機がたくさん製品化されていますので、どなたも入手し易いはずです。
実験結果ですが、グラフのように、僅か1時間で二酸化炭素濃度が1,000ppmに達し、その後も上昇を続けることが分かりました。数日同等の条件で測定を繰り返しましたが、概ね、2時間で1,500ppm近くに。つまり、テレワークで2時間6畳間にこもるとすると、眠気や不快感を覚え、集中力を欠く原因になり得るという訳です。
近年は在宅テレワーク用に、3畳程度の専用室を設けるケースもあり、こうした狭小空間では、さらに注意が必要と言えます。
■睡眠時も要注意!
二酸化炭素の濃度は、就寝時にも注意が必要そうです。先述のグラフは、6畳間で、窓、扉、換気口を締め切り、大人1人が居る状態で10時間にわたる二酸化炭素濃度の変化を示しています。約5時間で2,000ppmに達し、好ましくない状態になることが分かります。睡眠時は自覚症状が無いまま、数時間と長く続く可能性があるため、より注意が必要と言えます。
因みに、日を改めて換気口を開けた状態で測定した場合は、以下のグラフの通り、1,300ppm程度まで上昇するものの頭を打って横ばいに。換気口を閉じている時よりも大幅な改善が確認できましたが、長時間にわたって1,000ppmを超えている状態が続くことには変わりなく、冷たい外気の侵入によって肌寒く感じたのも気になりました。
■解決策は?
換気設備(24時間換気システム)が正常に稼働していても、テレワーク部屋や寝室がきちんと換気できているとは限りません。換気口や窓を開けたり、ドアを開けて換気を図ることは有効ですが、それでも換気不足は考えられますし、逆に換気をし過ぎると空調の効率が低下し、冬場は寒くなったり、光熱費もかさみます。
お勧めしたいのは、まずやはり、二酸化炭素濃度が測定できる機器を導入し、「二酸化炭素濃度の見える化」をすることです。筆者宅の場合、換気口と窓は閉めたままで、部屋の廊下側の扉を約30cm開けておくだけで、極端な温度変化が無く、1,000ppm程度以下をキープできることが分かりました。
各ご家庭や部屋に応じ、いくつかの換気パターンを実験すれば、最適解が見つかるはずです。
■家電で解決できないの?
空気の質という点では、「空気清浄機」が思い浮かびますが、現時点で二酸化炭素を吸収できる製品は存在しないようです。エアコンについては、換気機能を搭載した製品が増えつつあり、これらを利用すると一定の換気効果が期待できます。また、一歩進んだ取り組みとしては、ダイキンの換気機能搭載エアコンと、CO2センサーも搭載した「Beside」の組み合わせ。二酸化炭素濃度が高くなると自動でエアコンを換気運転することができます。今後、こうした機能が、エアコンの標準機能としてより手軽に利用できるようになるかもしれません。
ほか、住宅に後付けできる熱交換機能を備えた換気空清機(例: 三菱電機「ロスナイVL-10SR3」)のような製品もあります。
つまり、二酸化炭素対策としては「換気」が必須で、空調のエネルギーロスを低減したい場合は、熱交換タイプの換気扇を検討すると良いでしょう。
■さいごに
近年の住宅の高気密化とエアコン暖房によって、換気不足が生じる可能性は高くなったと言えます。二酸化炭素は目に見えず、自覚症状も覚えにくいため、是非この記事を切っ掛けに、二酸化炭素濃度を測定して、各ご家庭に合った快適で省エネかつ健康的な換気の実践に繋がれば幸いです。