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電気設備の基礎知識 ものづくり&まちづくり BtoB情報サイト

電気設備とは、電気を作り、送り、使うための設備です。つまり、電気設備という用語は相当に広い範囲を指しています。電気は、発電設備で作られ、送電設備で変電設備を経由しながら、人々の暮らす街まで運ばれていきます。電気設備は、人々の生活の向上や文明の発展に貢献してきました。本連載では、6回にわたり電気設備の基礎知識について、主に電気を使う側に立って建物内の電気設備を解説します。第1回は、私たちの周りにある構内電気設備を中心に解説します。

もくじ

第1回:電気設備とは

1. 電気設備とは

電気設備は、主に電力会社の設備である発電設備と送配電設備、そして電気を使う側の設備である構内電気設備に大きく分類されます(図1)。発電設備で発電された電気は、送電、変電、配電を経て届けられます。この間にも、さまざまな電気設備が使われます。本稿で取り上げる構内電気設備は、需要家(電力会社が電気を使用するユーザーを指す呼称)が電気を使うための設備です。主に、建物や施設の中で電気を送り届けるための設備を指し、照明や防災設備などが安全で快適に使用できるようにする役割があります。

図1:電気設備

2. 電気設備の種類

私たちが使用する電気は、電気をエネルギーとして使う場合と、電気信号の情報として使う場合に分けられます。電気をエネルギーとして使う場合は、使用電力Wが大きく「強電設備」と呼ばれます。これに対して、電気信号による情報通信として使う場合は、使用電力が少なく「弱電設備」と呼ばれます。

強電設備には、電力会社の電気を利用するための受変電設備や、停電などに備えた非常電源設備があります。エレベータなどのモータを使うものは、動力設備と呼ばれます。その他、空調設備、照明設備、さらに建物内に電気を送るための幹線設備も強電設備です。一方、弱電設備には、電話やLANなどの情報通信設備、火災などに備えるための防災設備などがあります。最近では、建物全体を管理するための情報ネットワークも、弱電設備として使われています。

電気設備に関連する用語には、明確な定義がありません。例えば、構内電気設備を、……

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3. 電気設備に関わる法令、資格

電気設備を取り扱うには、取り決められた法令や資格などに沿って常に安全に行わなければなりません。まず、電気設備に関わる法令などのうち、電気事業法、電気設備に関する技術基準を定める省令、電気設備技術基準の解釈、内線規程について説明します。

・電気事業法

電気設備に関わる法令や規格にはさまざまなものがあり、その大元となるのが電気事業法です。電気事業法は、電気工作物の工事・維持・運営に関する規則を定めています。電気工作物とは発電、変電、送電、配電又は電気の使用のために設置する受電設備(機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路など)をいい、事業用電気工作物、一般用電気工作物があります(引用:経済産業省ホームページ)。電気事業法では、電気工作物を「電気事業用電気工作物(電力会社の施設)」、「自家用電気工作物(高圧や特別高圧で受電して電気を使用する需要家)」、「一般用電気工作物(低圧で受電して電気を使用する需要家)」の3つに分類しています。このうち、一般用電気工作物以外の2つを事業用電気工作物と呼び、工事・維持・運営には電気主任技術者の監督が必要とされています。

・電気設備に関する技術基準を定める省令(電気設備技術基準)

電気事業法は、電気の基本を定めた法律であり、技術的な詳細については定めていません。そのため、……

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第2回:受変電設備の基礎知識

前回は、電気設備とは何か、その種類や関わる法令、資格などを説明しました。今回は、構内電気設備の1つである受変電設備について解説します。受変電設備は、構内で受電、変電、配電を行う設備です。発電所で作られた電気は、さまざまな規模の受変電設備を通り、電圧を下げながら家庭やビル、工場などに休むことなく届けられています。その他、受変電設備は、事故などが起きたときに回路を遮断して建物と電力系統を切り離し、設備を保護する役割があります。

1. 受電と変圧

受変電設備は、電力会社から送られてくる高圧や特別高圧の電力を、低圧の電力に変換して分配します。電力はさまざまな形態(電圧、相数)に変換され、構内に送られます。電力会社から送られてくる電力には、それぞれ異なる電圧や方式があり、契約電力ごとに電圧が異なります(表1)。電力は電圧と電流の積で決まるため、電力が大きい場合、電圧を高くしないと電流が大きくなってしまい、太い電線で配線しなくてはなりません。

表1:契約電力と受電電圧
契約電力50kW未満50kW~2,000kW未満2,000kW以上
電圧の種別低圧高圧特別高圧
受電電圧単相 100V、200V、三相 200V三相 6,000V三相 2万V、3万V、6万Vなど

契約電力のイメージとして、低圧の50kW未満の電力というのは、一般の住宅やコンビニ程度の店舗であり、特別高圧の2,000kW以上というのは、床面積が数万m2(東京ドームクラス)の大規模な建物や施設になります。低圧には、さまざまな電気の種類があります。家庭で主として使う単相100Vの他に、IHヒータやエアコンなどは単相200Vを使用します。工場や事務所などでは、それに三相200Vが加わります。低圧で受電した場合、変電は行われないため、必要な電圧は全て電力会社が供給します。

電力会社の電気は、架空線、または地中から引き込みます。引き込んだ地点には開閉器(スイッチ)を設け、点検などで遮断できるようにしています。ここを受電点といいます。電圧を変更することを変圧といい、変圧器(トランス)を使います。変圧器にはコイルが2組巻かれており、コイルの巻数比で電圧が変更されます。変圧器を通しても電力は変わらないので、電圧を下げれば、それに応じて電流が増えます。変圧設備では、その施設の設備での必要に応じた電力に変換します。

図1:変圧器(トランス)

受変電設備のもう1つの大きな役割は、……

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2. 配電

配電とは、発電所で発生した電力を負荷機器に適した電圧にして各家庭や工場へ分配することです。変圧された電気は、建物内に幹線で配電されます。配電はフロアごと、あるいは部屋ごとになるため、建物内には分電盤が設けられています(図2)。分電盤とはその名のとおり、幹線から送られてきた電気を分配するための装置です。動力分電盤と電灯分電盤とに分けて考えられることもあります。この呼び方は、送られる電気が低圧の場合、契約が単相の従量電灯と三相の動力契約に分かれていることからきています。

図2:住宅用分電盤(引用:森本雅之、交流のしくみ、講談社ブルーバックス、2016、P.97)

分電盤には、……

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3. キュービクル

キュービクルとは、受変電設備に必要な機器が収められた鋼鉄製の箱です(図3)。屋内に設置される場合と、屋外に設置される場合があります。一般に電気室に置かれることが多く、あまり見る機会がないでしょう。受変電設備の中でも、屋外に設置されることのあるキュービクルは、目にしていることが多いかもしれません。

図3:屋外用キュービクル

キュービクルを使う目的は2つあります。まずは、……

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4. 非常電源設備

停電の際、建物では電気を使うことができなくなります。このような時に備えて、電力をバックアップするのが非常用電源設備です。非常用電源設備には、自家用発電設備や蓄電池設備などがあります。予備電源、防災電源などと呼ばれることもあります。また、非常電源設備もキュービクルとされることがあります。

・自家用発電設備(自家発)

自家用発電設備(自家発)には、通常時にも使う常用発電設備と、停電の時だけ使う非常用発電設備(非発)があります。自家用発電設備は、発電機の他にエンジン、燃料タンク、消音機(マフラー)などで構成され、主にディーゼルエンジン、ガスタービンが使われます。

常用発電設備は、大規模な施設において、自前で発電した電気を使う場合に使われます。この場合、電力会社の電気と併せて使うことが多くなっています。このように、自家用発電設備と電力系統を接続することを系統連系といいます。常用発電設備では、……

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第3回:配線設備の基礎知識

前回は、受変電設備を説明しました。今回は、建物内部の配線と、それに使う電線やケーブルについて解説します。電力は、配線設備によって建物の隅々まで送り届けられています。そして、実際に電力を運ぶのはケーブルや電線です。どのようなケーブルをどこに配置するか、つまり配線は電気設備の基本です。そこで、ケーブルの選定法(容量計算)も合わせて紹介していきます。

1. 配線方法

配線とは、電気機器・通信装置などを導線で接続して回路を構成することをいいます。屋内配線工事をする場合、形状に合わせた施工が必要となります。電気室やキュービクル、天井裏や床、防火区画を利用した配線方法の例を説明します。

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・電気室、キュービクル

電気室やキュービクルからは、低圧幹線と呼ばれる太い配線が出ています。幹線の経路はEPS(Electric Pipe ShaftまたはElectric Pipe Space)と呼ばれる、建物の最上階までを縦に貫く配線スペースです。EPSには強電の配線ばかりでなく、通信などの弱電の配線も設置されます。

・天井裏

各階では横方向の配線が行われます。一般的には、はしごのような形をしたケーブルラックを使い、天井裏に配線します。ケーブルラックにより、たくさんのケーブルをまとめて配線することができます(図1)。ケーブルラックを使った配線は、天井板のないことが多い駅のホームで実際に見ることができます。

図1:電気制御室のケーブルラック

・床下、壁

横方向の配線では、床のコンクリート内にあらかじめ配管を設けておく場合もあります。ただし、……

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2. 電線、ケーブル

電線には、導体がむき出しのものと、絶縁被覆がされているものがあります。一方、ケーブルとは電線の外側に、さらに機械的な強度のある外装を施したものです。例えば、USBケーブルは何本かの電線に外装があるので、ケーブルと呼ばれます。電線とケーブルの違いを図2に示します。電線・ケーブルの許容電流は、種類と太さ(心線の断面積)により内線規程で定められています。

図2:電線とケーブル

表1は、電線、ケーブルの……

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3. 配線設備の基本設計

配線設備の基本設計には、幹線設計におけるケーブルの選定、配線器具の計画、電線管やバスダクトの使い分けなどがあります。バスダクトなどで膨大な電流を流す幹線を用いる場合、事故発生時の停電範囲が大きくなるため、遮断器を段階的に設けることで停電範囲を限定することができます。配線設備の基本設計において最も重要な幹線設計や、保護協調などについて説明します。

・幹線設計

幹線は大電力を供給するため、ケーブルサイズが大きくなります。幹線は、電力を供給する負荷に対する電源容量だけでなく、電圧降下と許容電流を考慮して選定します。配線距離が長い場合、配線の抵抗による電圧降下が大きくなるため、電源容量だけではケーブルサイズを決定できません。電圧降下を小さくするために、ケーブルではなくバスダクトと呼ばれる配線をすることがあります。バスダクトとは、銅またはアルミ製のレール状導体の外側を絶縁物で覆ったもので、鉄骨のH鋼に似た形状をしています。導体の断面積を大きくできるので、電圧降下が小さくなります。

電圧降下の主原因となる導体の直流抵抗は、長さと断面積から計算できます。しかし、配線には交流電流が流れるためにリアクタンス、表皮効果、近接効果などが生じ、精密な計算を行うためには交流抵抗までを考慮する必要があります。なお、許容電圧降下は、内線規程により配線長ごとに細かく規定されています。

・幹線分岐と保護協調

幹線設備では分岐にも注意が必要です。例えば、図4に示すように、……

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第4回:動力設備

前回は、配線設備について説明しました。今回は、動力設備を解説します。動力設備は、動力を利用するための設備です。動力とは運動エネルギーであり、モータの使用によって電気エネルギーから変換できます。つまり、動力設備とはモータを使う設備だと考えていいでしょう。動力設備は、さまざまな動力機器と動力盤から構成されます。ここでは、代表的な動力機器である空調設備と搬送設備(エレベータ)を取り上げます。また、動力設備に共通する機器であるモータとインバータについても説明します。

1. 動力機器

動力機器とは、三相200Vや三相400Vを電源として三相モータを使う機器のことを指します。低圧電力において、単相の電力を電灯、三相の電力を動力と通称しています。これは、家電などの小型機器以外では三相モータを使用して動力を得ていることからきています。低圧の動力機器における電源には、三相200Vと三相400Vがあります。動力設備は、この2種類の三相電源を必要とする動力機器に電力を供給する設備です。動力機器には、図1に示すようなさまざまなものがあります。このうち大容量のヒータなどの場合、モータは使わないものの三相の大電力を使用するため、動力機器と考えます。

図1:各種の動力機器

動力盤は、……

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2. 空調設備

空調設備は、空気調和を行う設備です。空調とは、単に冷暖房だけでなく、温度や湿度の他、気流や空気の清浄度を整える機能を含みます。空調設備では、空気や水に熱を供給する源である熱源が必要です。熱源には、冷凍機やボイラなどがあります。ヒートポンプは、1台で冷熱と温熱を作ることのできる熱源です。空調方式は、熱源をどこに置くかによって中央熱源方式と個別分散熱源方式に分けることができます。

・中央熱源方式

中央熱源方式とは、熱源を機械室などに集約して空調を行う方式です。熱源から空調する場所までの熱輸送が必要です。冷温風をダクトで送る方式と、冷温水を配管で送る方式があります。水で熱輸送する場合、ファンコイルユニットで空気の温調をします。

・個別分散熱源方式

個別分散熱源方式とは、熱源を分散させて、各階あるいはゾーンごとに空調を行う方式です。いわゆるエアコンです。パッケージエアコンやマルチエアコンは、室外機と室内機を接続することによって、その間を冷媒により熱輸送しています。この方式は、機器単体で個別に制御できることが特徴です。

熱源は、空調設備で最も消費電力が大きいところです。代表的な熱源として、冷凍機のしくみを紹介します。冷凍機の方式の代表的なものは蒸気圧縮式冷凍機と呼ばれる、圧縮機を使った冷凍機です。この冷凍機は、冷凍サイクルにより熱を移動させます。冷凍サイクルとは、……

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3. 搬送設備

建物の搬送設備として、最も多く使われるのがエレベータ(昇降設備) です。エレベータはモータで駆動され、ロープ式と油圧式に大別され ます。

・ロープ式エレベータ

ロープ式エレベータは、人や荷物が乗るかごと、釣り合いおもりを均衡状態にし、巻き上げ機で駆動します(図3)。屋上に機械室を持つものと、昇降路内部に巻き上げ機を設置する機械室のないものがあります。ロープ式ではモータの回転でかごを移動させるため、モータの制御がエレベータの乗り心地に直接影響します。そのため、モータの回転数はインバータ(次項で解説)により制御されます。特に、高層ビルの高速エレベータでは、加速度を大きくする必要がある一方、それによって乗り心地は悪くなってしまいます。そのため、インバータによって加速度の変化率を制御しています。インバータにはベクトル制御という精密な制御が使われています。なお、ギネス世界記録に認定されている世界最高速のエレベータは、中国の95階建てビルに設置されている、分速1,260m/s(時速75km/h)のものです。

図3:ロープ式エレベータ構造(引用:一般社団法人日本エレベーター協会ウェブサイト)

・油圧式エレベータ

……

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4. モータとインバータ

動力設備には、誘導モータという交流モータが使われます(図5)。正確には、三相かご型誘導電動機と呼ばれます。誘導モータは、三相交流電源に接続するだけで回転します。しかも、そのモータの極数(内部のコイルの分割数)に応じて、ほぼ一定の回転数で回転します。モータの負荷が大きく変化しても、回転数の変化はごくわずかです。動力を得るためには、非常に使いやすいモータなのです。

図5:誘導モータ

誘導モータを使う場合、電気設備として考慮しなくてはならないのは始動電流とモータの保護です。誘導モータを三相交流電源で直接駆動する場合、始動時に一時的に大きな電流が流れます。これを始動電流といいます。出力の大きいモータの始動電流は、電源に影響を及ぼしてしまうことから、始動電流を低減する必要があります。そのため、……

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第5回:電灯設備

前回は、動力設備について説明しました。今回は、電灯設備を解説します。電灯設備は、単相100V・200Vを使う設備を指します。その名のとおり電灯、すなわち、照明の設備が中心です。その他に、弱電機器のためのコンセントなど、電灯分電盤から配線する機器も含んでいます。ここでは、代表的な電灯設備である照明を中心に説明していきます。

1. 照明設備

照明の目的は、部屋の明るさを確保することです。しかし、ただ明るくするだけでなく、まぶしくしないということも要求されます。そのため、照明の設計は、照度、グレア、演色性などの数値を考えて行います。

・照度

照度は、照明の基本量で、光の当たる面の明るさを示す量です。照度の単位はルクス(lx)で表されます。

・グレア

グレアは、まぶしさの指標です。まぶしさは、光源の輝度の影響が最も大きく、加えて、光源の大きさや光源への距離も関係します。光源の輝度の単位はカンデラ(cd)で表されます。グレアを評価するためにグレア評価値(UGR)を計算します。グレア評価値は不快感を示す数値で、小さいほどまぶしくないことを表します。グレアは基準値が定められているので、この値を超えないようにする必要があります。

・演色性

演色性は、光源がどの程度、太陽光に近いかの指標です。光源の色により、物の色の見え方が異なってしまいます。太陽光の演色性を100とした演色評価数が使われます。

この他にも、さまざまな指標があります。それは、照明の性能が物理量だけでなく、人間の感度を考慮した心理物理量も含めて考える必要があるからなのです。このような指標を使って、照明器具の配置(照明計画と呼ばれます)を行います。照明器具の配置は、複数の光源と作業面との関係で設計されます。

それぞれの部屋の用途によって、必要な明るさは異なります。例えば、JISで定められている照明基準として照度の例を、……

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2. 照明器具

照明器具は、電気設備として最も目につく存在です。表1に示したように、用途によって必要な明るさが異なるのに加え、さらに、照明による雰囲気や照明手法も異なります。照明手法は、表2に示すように分類されます。従って、照明器具は性能や手法など、さまざまな要因を考えて選定されています。

表2:照明方式(参考:森本雅之、電気エネルギー応用工学、森北出版、2015、P.110をもとに作成)
名称方式特徴
直接照明光源からの直接光で作業面を照らす方式効率が高い。しかし、照度が不均一になりやすく、まぶしさを感じる
間接照明光源からの光を壁面・天井面などで反射させてから作業面を照らす方式効率は低い。しかし、照度を均一にしやすい
半間接照明直接光と反射光を組み合わせて作業面を照らす方式明るさよりも演出性を重視する

照明の光源には、従来は白熱灯や蛍光ランプが使われていました。今後は主にLED(発光ダイオード)が使われていくと考えられます。LEDは、半導体を使用しているため、低消費電力で長寿命なのが特長です。LEDで白色光を作るには、青色LEDを使います。青色LEDの青色光と、青色LEDにより発光する黄色蛍光体の黄色光を合成すると、白色光になります。蛍光体の種類により、昼光色や電球色など、各種の光色が得られます。また、LEDディスプレイなどで、光そのものを見せる場合には、……

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3. 非常用照明

非常用照明は、停電時に点灯して明るさを得るための照明です。非常用照明は、30分間点灯できる必要があります。充電式の蓄電池が内蔵されているものは、常時充電状態になっており、停電して充電電源が切れることにより点灯します。この他、建物内の蓄電池設備の電力を使うものがあります。これは停電検出器により専用回路に通電し、点灯します。非常用照明は、建築基準法により設置基準が設けられ、床面が1ルクス以上になるように設置されます。

誘導灯は、火災などの際に避難経路を示すために設置されます。誘導灯は蓄電池式で、点灯時間は20分以上です。誘導灯は、……

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第6回:情報通信設備

前回は、照明を中心とした電灯設備について紹介しました。本連載の最終回となる今回は、情報通信設備の基礎知識を解説します。情報通信設備は、建物内外の情報伝達を行うための電気信号を扱う弱電設備です。電話、インターホン、テレビアンテナといった住宅に欠かせない設備の他、建物内の情報ネットワークを支えるLANも重要な情報通信設備です。ここでは、従来一般住宅で使われている電話などに加え、インテリジェントビル、スマートビルでの情報通信設備についても説明していきます。また最後に、情報通信設備の保護に重要な役割を果たす避雷設備も解説します。

1. 電話工事

電話工事は、屋外工事と屋内工事に分類されます。電話の屋外工事は、電話線を建物に引き込むまでの工事で、NTTが行います。屋内工事は、構内電気設備としての電話工事です。家庭用の電話では、電話線は建物の保安器に接続すれば、引き込み完了となります。保安器とは、落雷によって発生する誘導電流や高電圧から、通信機器を保護するための機器です。その保安器から配線を行い、屋内に電話端子(モジュラージャック)を設置すれば、電話機は電話局の交換機に直接つながります。電話機が1~2台の一般家庭であれば、これで作業終了です。

電話機が何10台もある企業や施設の場合は、屋内工事が必要になります。まず、構内専用交換機(PBX:Private Branch Exchange)を設置し、電話局と接続します。このPBXに電話機を接続すれば、それぞれの電話機で外線、内線ともに通話が可能になります。この場合、電話機1台ごとにPBXと接続するので、電話機が多い場合、あるいは複数階にまたがる場合などは、さらに多くの配線を行う必要があります。

そこで、電話の配線を一旦、端子盤に集約します。その端子盤を主配線盤(MDF:Main Distribution Frame)といいます。MDFを通じて各階に電話線を分配します。これにより、……

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2. 情報ネットワーク

情報ネットワークとして、まず必要とされるものがLAN(Local Area Network)です。LANとは、ある範囲内のコンピュータやさまざまな情報機器間でのデータ通信を可能にするものです。LANには有線と無線があり、一般的には、有線LANにはEthernet(イーサネット)、無線LANにはWi-Fi(Wireless Fidelity)という規格が使われます。また、電力線を信号線として使うPLC(Power Line Communication)という規格が使われることもあります。

LANの基本的な構成を、図2に示します。LANは複数の機器で構成されるので、それらの機器をネットワークとして接続するためにハブが必要になります。また、LANケーブルでの通信は100m程度までといわれており、それより長い場合は中継器としてルータを使います。

図2:LANの基本構成

ハブは、LAN内の機器を接続するために使用します。ハブは多くのポート(接続口)を持ち、……

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3. ビルオートメーション

ビルオートメーションは、電気設備をはじめとするビルの設備を総合的に管理するシステムです。運転制御、監視・表示、記録、計測、データ処理などを行います。ビル・エネルギー管理システム(BEMS:Build-ing and Energy Management System)と呼ばれることもあります。しかし、ビルオートメーションは、エネルギーだけでなくビルの管理も含めた統合的なシステムを指します。

現在は、一般的にビルオートメーションをBACSと呼ぶことが多いです。BACSとは、ビル自動管理制御システム(Building Automation and Control Systems)として、性能、機能、通信などを定めたISOの国際規格のことです。BACSの通信仕様としては、……

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4. 避雷設備

避雷設備は、建物を落雷から守るための設備です。避雷設備は、その名称から落雷を避けるための設備を思わせます。しかし実際には、落雷したときに建物や設備を保護する、つまり建物や設備に悪影響を及ぼすことなく雷を大地に逃がす設備のことです。落雷による情報機器や通信機器への影響は、避雷設備によって対策します。避雷設備は、一般的な落雷である外部雷によるものと、電線を伝わって建物内に侵入する内部雷によるものに分類されます。外部雷による避雷設備は、受雷システム、引き下げ導線システム、接地システムで構成されます(図3)。

図3:外部雷のための避雷設備

・受雷システム

受雷システムは、雷の直撃を受ける部分です。避雷針だけでなく、建物の屋根や壁にも導体を設けて受雷します。

・引き下げ導線システム

引き下げ導線システムは、受雷した雷電流を接地に導く部分です。並列につながれた複数の引き下げ導線を使って、電流の分散を図ります。建物の鉄筋や鉄骨を引き下げ導線として使うこともあります。

・接地システム

接地システムは、雷電流を、接地極から大地に流出させる部分です。接地極は埋設するため、電食(電気化学作用によって、金属が解け出し腐食すること)の対策も必要があります。

以上の避雷設備は、……

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