深夜のPA・SAで目立つ多数のトラックによる駐車問題 その背景とは 夜の高速道路にあふれるトラック どうしてこうなった? 駐車マス増も解決ならず
東名高速などで、夜間のPAやSAが連日トラックであふれ返っています。NEXCO各社は駐車マスの増設などに取り組むものの、抜本的な解決には至りません。背景には何があるのでしょうか。
深夜のPA/SAは、まるでトラックターミナル
新型コロナ感染拡大防止で不要不急の往来自粛が呼び掛けられ、交通量が減っている高速道路。そのなかでも、以前から言われてきたパーキングエリア(PA)やサービスエリア(SA)からあふれ出すトラックの駐車が問題になっています。
高速道路会社は区画を見直して駐車スペースを増やすなど、さまざまな努力をしていますが、いずれも根本的な解決にはなっていません。実際に物流の大動脈である東名高速を往復すると、PA/SAに駐車できないトラックが、さまざまな“隙間”を見つけて止まっていることがわかりました。
SA出口方向から駐車場を望む。ラインに沿って駐車するトラックの後部に横付けする形で縦列駐車の列ができている(中島みなみ撮影)。
記者(中島みなみ)は検証のため、2020年12月、2021年4月、6月と東名高速(東京〜名古屋)で時間を変えて走りました。最も顕著だったのは深夜のPA/SA。特定のエリアに限らずどこも、まるでトラックターミナル状態でした。駐車スペースは小型車と大型車を分離していますが、見渡す限りほとんどトラックで埋まっていました。
駐車区画に沿って止まったトラックの後部には、別のトラックが横付けして通路の幅を狭めています。駐車区画の外周は、通路の左右両側に車両が止まり、狭くなった通路を乗用車で通行すると、まるで谷間を抜けるようです。走りやすくするために空間をあけておく白色縞模様のゼブラゾーンは、もちろん埋まっています。「通路駐車禁止」の大きな看板が設置されているSAもありましたが、そこは駐車スペースを増やすための工事が行われている場所でした。
駐車スペース不足の緊迫感は、本線を走っている時から伝わってきます。深夜近くなると、高速バスが停留所に停車するための導線に駐車するトラックが目立ってきます。道路標示を見なくても、この先にPA/SAがあることは、本線上から続く路肩の縦列駐車でわかります。
この縦列駐車はPA/SAの出口の路肩でも発生しています。駐車ができないようにパイロンが置いてある区画もありますが、その隙間に割り込むように止まっているので、あまり効果はありません。縦列駐車は長く、ときには本線合流部の直前まで続いていました。そのためアプローチで距離が稼げず、十分な加速が得られないまま本線に出ざるを得ない状況に陥ることもありました。
PAは終日、トラックの駐車場に
あまりにもトラックが密集しているため、まるで出口をなくして詰まってしまったのではないか、と錯覚してしまうほど、圧倒的に駐車場所が不足していると感じます。背景には何があるのでしょうか。
トラックがPA/SAにあふれるのは、深夜割引の割引が適用されるために時間調整しているのだ、と言われてきました。通常料金の30%割引にするためには、深夜0時〜4時のいずれかの時間に高速道路を利用していなければなりません。しかし、あるPAの飲食店の従業員は、駐車の傾向をこう話します。
「車両は夕方から増えてきて、割引時間帯になっても減りません。落ち着いてくるのは明け方でしょうか」
これを確かめるために、昼間にも走りました。不要不急の外出抑制のため乗用車が少ない影響もあるのかもしれませんが、昼間もPAに駐車する車両のほとんどはトラックでした。この記事で「PA/SA」と、PAを先に記載したのも、駐車するトラックにとってはPAがより身近だからです。
「通路駐車禁止」の巨大看板も立てられている。取材当時、このエリアは駐車スペースを増やす工事が進められていた(中島みなみ撮影)。
駐車場不足は「働き方改革」も影響している、と言われています。ドライバーの労働時間は運転時だけでなく、出庫から入庫まですべての拘束時間を短縮し、十分な休息時間を確実に取得することが厳しく求められています。とはいえ、職業ドライバーの多くは休息場所を自前で確保することが不可能に近い現実も。そのようななか、高速道路のPA/SAはシャワー施設などが整備されており、代表的な休息施設として機能しています。
トラック輸送が日本の物流を支えていることは揺るぎない事実ですが、それにしても2020年、2021年と高速道路の利用総数が減少、加えて観光の貸切バスなどがほとんど走っていない状況でもトラックがPA/SAにあふれていることは、コロナ禍前の日常を社会が取り戻そうとする上で大きな課題になりそうです。