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Jan

親父の口癖が「農業は好きな時に自分の好きなことができるぞ」だったんです。

——堀田さん自身は、これからどんな農業をしていきたいですか? 目標にしている規模などはあるのでしょうか。堀田:就農当時の売り上げが1,000万円だったので、10倍の1億円が目標。そのために、電卓をたたく日々です(笑)。やる理由が、あるのか、ないのか。利益率の高いことを少しずつ積み上げていく感じです。たとえば、うちでは田んぼの畦に生えている雑草を自分で刈ります。農薬を使うと草が生えなくなるので、雨が降ったときに畦が崩れてしまう。結果的に重機屋さんに頼んだり、自分で機械を買って畦を直すんだったら、僕は余計なお金や時間をかけずに草を刈る方を選びます。農薬を使ってもいいけれど、さまざまな用途(特徴)がある中で「何を選んで使うか」を考えることが大事だと思う。僕が北海道農協青年部協議会の役職に就こうと思ったのは、発言力がつくからという理由もあるかもしれません。畦1本にしても、地域性を生かした作物を作ることにしても、「今の農業って、こういうふうにあるべきじゃない?」というのを、マイクを使ってもう少し大きな声で言いたい(笑)。

親父の口癖が「農業は好きな時に自分の好きなことができるぞ」だったんです。

——技術や知識を自分のためだけでなく、広く伝えたいというわけですね。他の人たちが堀田さんのようになって実力をつけたら、堀田さん自身が儲からなくなってしまうなんてことはありませんか?堀田:僕の電卓では、自己満足で終わってしまうことが一番安い(儲からない)方法なんです。逆に、地域全体の生産物の質が上がれば高い値段で販売できるから、取り引き有利になります。僕らの米は「たんとう米」という名前で販売されていて、どこにも個人名は入っていません。「堀田米」と名付けて売るためには責任をすべて自分で持たなくてはならないし、それには大きなコストがかかります。厚真の農業には、田んぼの畦をきれいに守ったり、豊富な水資源や太平洋気候の特性を生かしながら30年も40年もかけて“みんなで”頑張ってきた歴史があります。農業を16年続けて、最終的にそういうことが大切だと思ったんです。自分1人がいいトラクターに乗って、いい田んぼを作って、いい環境で仕事ができて、その時は稼いでいるように見えても、次の世代にまで経営を引き継いでいこうとすると難しいかもしれません。

——みんなで取り組むことが、大きな力になる場合もありますね。堀田:もちろん、独自性のある生産物は個別に盛り上げていくのが良いと思います。だけどたんとう米のように大きなくくりになると、結果的にそれぞれの農家の米が混ざるので、地域全体で米の品質を底上げすることが重要になってきます。厚真町では20年以上前から、粒は小さくても食味に優れた良品質米づくりに取り組んできました。「数ある北海道米の中から厚真の米を選んでもらえるようになる」という町の方向性に水を差して川を蛇行させるより、もっともっときれいな川に整備することで日本一の川になるほうがセンスがいいんじゃないかな。周りから見てセンスがいい町、農業にしたい。だから僕の人生設計(農業経営)は一歩一歩です。周囲の反響を無視して自分のやりたいことだけをするのは楽だけど、それってあまり評価されない。1人で一気に規模を拡大するのではなく、みんなが応援してくれて、評価してくれることに応えたい。周りの人に声をかけて、みんなでもっともっと厚真町農業を盛り上げたい。そういうことなんです。