ホオジロザメが恐れる海の生き物って何か知ってる?
サメが逃げ惑う映画ができたりして。
もし映画が科学的に正確だったなら、『ジョーズ』はこうなるはず。
かの有名なテーマ曲が流れ始め、黒い背ビレが水面をコソコソと動き回る。ホオジロザメが恐怖に駆られて逃げ出すとカメラが本当の脅威、シャチの姿を捉えた…。
ホオジロザメとシャチはどちらも同じ海域に現れ同じ獲物を捕食し、ともに食物連鎖の頂点に立つ動物です。しかし、Scientific Reportsに掲載された最新の論文によれば、両者が遭遇した場合、シャチがほんの短時間現れただけでも、巨大なホオジロザメはすばやく退散してしまい、長い間戻ってこないんだとか。
ホオジロザメとシャチの北太平洋での活動海域は、特にアザラシを捕食するため沿岸部で遭遇する秋から冬の初めにかけてかち合います。この捕食動物たちの直接的な接触についての研究は多くはありませんが、以前報じたようにシャチは恐らく栄養が豊富な肝臓を餌にするために、サメを襲うことがあります。種間関係には食う食われる以上のことがあるので、このような同じ海域内での生物たちの関係を研究者たちは調べることにしたのです。
サメとシャチ、どっちが強い?
研究者たちは2006年から2013年にかけてカリフォルニア沿岸の3カ所(サウスイースト・ファラロン島、トマレス・ポイントとアニョヌエボ島)で、ホオジロザメを「アウトドア用のカーペットで作ったアザラシのデコイ」で自分たちの船におびき寄せ、165頭に電子タグをつけました。その後、サウスイースト・ファラロン島での各種サメ、シャチそしてゾウアザラシのモニタリング調査からのデータを収集。彼らの分析により、シャチが島に近づいていた時ほど、サメに殺されたアザラシの数は少なかったことが分かりました。
サメがシャチに怯えたという例はたくさんあります。2009年11月2日、島付近の海中には17頭のサメがいました。シャチは2時間半ほど滞在しただけでタグのついたサメを1頭も殺すことはありませんでしたが、同シーズン中はそれ以降、ほとんどのサメを検知しなくなったのです。2011年と2013年にも同じようなサメの集団脱出が発生しました。
この研究は調査データからの推定に頼っているものの、サウスイースト・ファラロン島近くで狩りをするホオジロザメは、シャチが現れるのを恐れているという証拠を示しています。これは論文によると、ただサメを怖がらせて追い払う以上の影響を持ちうる種との微妙な関係、つまり周辺のサメが少なければゾウアザラシは増えるという個体数に及ぼし得る影響を示しているから重要なんだとか。
この研究からの学びは、サメはシャチほど怖くはないということ。これを踏まえて『ジョーズ』と『フリー・ウィリー』のリメイクなんてどうでしょ?
Source: Nature